世界中にファンをもつ人気ファンタジー小説『精霊の守り人』(上橋菜穂子作)が、日生劇場開場60周年記念公演として舞台化。皇子を守る用心棒バルサには明日海りおと梅田彩佳がWキャストで扮し、壮大な世界観はそのままに、音楽劇としてよみがえる。7月27日(木)、東京・日生劇場でゲネプロと取材会が行われた。
凄腕の短槍使いバルサは、ひょんなことから新ヨゴ皇国の皇子チャグム(黒川想矢/込江大牙とWキャスト)の用心棒を務めることに。チャグムは恵みの雨をもたらす精霊の卵を宿しており、卵がかえらなければ干ばつに襲われてしまうという。バルサは幼なじみのタンダ(村井良大/山崎樹範とWキャスト)、呪術師トロガイ(雛形あきこ)と共に、魔物や帝の刺客からチャグムを守ろうとするが……。
ゲネプロでのバルサ役・明日海(以下同)は、仲間を思いやり、温かい笑顔で皇子を守る用心棒を好演。短槍を携えて戦うシーンでは、一転して厳しい表情と鮮やかなアクションで見せ、バルサの人となりを陰影豊かに演じた。タンダ役の村井も、バルサを大切に想っている様子を繊細に表現。時に三枚目ぶりを交えつつ、物語を頼もしく引っ張る。チャグム役の黒川は瑞々しい役づくりで、運命に巻き込まれる幼い皇子に説得力をもたせた。
その他、帝に仕えるジンを演じる渡部秀は、大柄な体躯と明瞭な声にジンの真っ直ぐな性格を感じさせ、後半の展開につなげる。星読博士のシュガ役・水石亜飛夢の葛藤する様子はジンと好対照で、2人のナンバーも見どころだ。その楽曲や歌、劇伴まで、音楽はすべて生演奏。美しい旋律が“守り人”ならではの深遠なストーリーを盛り上げていた。
取材会では、「みんな健康でこの日を迎えられたことが幸せ。心を込めて演じていきたい」と話した明日海。ファミリー向け・学校向け公演が予定されていることもあり、梅田は「観た方に少しでも多くのものを持ち帰ってもらえれば」と意気込む。
「観客が入って完成するのが“舞台”。反応が楽しみ」(村井)、「Wキャストの村井さんを見ていて、本当に面白い作品だな!と」(山崎)、「ぜひ素敵な音楽の生演奏にも注目して」(渡部)、「観ている方に何か夢を提示できたら」(水石)と、口々に抱負を語った出演者たち。怪しい呪術師トロガイに扮する雛形が「お子さんが悪いことをしたら、お母さんは『トロガイが来るよ!』と言ってください」と笑わせ、取材会は和やかな空気で終了した。
取材・文:藤野さくら