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『マイ・エレメント』(8月4日公開)

 火、水、土、風のエレメント(元素)たちが暮らすエレメント・シティ。家族のために火の街から出ることなく父の店を継ぐ夢に向かって頑張る火の女の子エンバーは、ある日、自分とは正反対で自由な心を持つ水の青年ウェイドと出会う。

 ウェイドと過ごす中で初めて世界の広さに触れたエンバーは、自分の新たな可能性や本当にやりたいことについて考え始める。火の世界の外に憧れを抱きはじめたエンバーだったが、エレメント・シティには「違うエレメントとは関わらない」というルールがあった。

 ピクサーアニメには、最初は違和感がある異形のキャラクターが徐々になじんできて、いつの間にか感情移入させられてしまうというパターンが多いが、この映画もその一つ。

 例えば、日本には混ざり合わず、調和しないものの象徴として「水と油」という言葉があるが、この映画も本来は相いれない「火と水」の関係をメタファーとして、異人種や異文化の問題について考えさせるところがある。

 ピーター・ソーン監督は「アイデアの発端は、アメリカ育ちの自分と韓国から移住してきた親との葛藤にあった。そこから、移民であることや、外国人であること、それから、好きになった人が、自分とは違う背景を持っていたらどうなるのかといった思いに発展していった」と語っている。

 一方、これまでのピクサー作品とは違い、エンバーとウェイドのラブストーリーが前面に出ていたのが新鮮だった。それは色遣いにも明確に表れていた。

 ソーン監督は「この映画のテーマの一つであるアイデンティティーという意味では、エンバーがその場所に属しているのか、いないのかが重要。ファイアタウンにいるときは、みんなと同じ赤に染まっているが、外の世界に出たときは違う色彩になる。でも、ウェイドという存在を通して、赤と青が混ざり合って紫になり、最終的には、その二つが一つになったときに、とても強い紫になる。このように、エンバーの感情を色彩で表現するということも重要な部分だった」と明かす。

 このように、擬人化されたキャラクターを通して、見る者に普遍的な問題について考えさせるところに、ピクサーアニメの真骨頂があるのだ。

『トランスフォーマー/ビースト覚醒』(8月4日公開)

 オプティマスプライム率いるトランスフォーマーたちが地球に来て間もない1994年。あらゆる星を食べ尽くす、惑星サイズの規格外の最強の敵「ユニクロン」が地球を次の標的に動き出した。

 この危機に立ち向かうべく、プライムは仲間たちを集め、意図せず戦いに巻き込まれた人間のノア(アンソニー・ラモス)とエレーナ(ドミニク・フィッシュバック)、そして地球を救う新たな希望であるビースト戦士たちと共に立ち上がる。

 このシリーズは、もともとは日本で発売されていたロボット玩具から発展したもので、製作総指揮スティーブン・スピルバーグ、監督マイケル・ベイ、主演シャイア・ラブーフの『トランスフォーマー』(07)から始まった。

 同じくベイ監督、ラブーフ主演の『トランスフォーマー/リベンジ』(09)『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』(11)、マーク・ウォールバーグ主演の『トランスフォーマー/ロストエイジ』(14)『トランスフォーマー/最後の騎士王』(17)、トラビス・ナイト監督、ヘイリー・スタインフェルド主演の『バンブルビー』(18)と続き、この映画がシリーズ通算7作目となる。

 今回は、動物の姿をしたビースト戦士(マクシマルズ)が初登場する新たな物語となっているので、過去のシリーズ作とのつながりは薄いが、人間の主人公がヒスパニック系と黒人というところに、時代の変化を感じさせる。監督は『クリード 炎の宿敵』(18)のスティーブン・ケイプル・Jr.。

 久しぶりの3D映画で、見ている間は派手なアクションと音響に耳目を奪われるが、見終わった後はあまり印象に残らない。それは各キャラクターの描写がいささか雑なので、彼らの行動原理がはっきりせず、戦いのシーンも雑然としていて誰が誰だか分からなくなるところがあったからだ。

 どうやら“続き”が製作されるようなので、捲土(けんど)重来を期待したい。

(田中雄二)