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演劇のみならず映像分野でも活躍する岡本昌也が、歌舞伎町のビル横にたむろする“トー横キッズ”と呼ばれる若者たちを描いた舞台『怪獣は襲ってくれない』が歌舞伎町に近い新宿シアタートップスにて再演される。キャストの顔合わせと初の読み合わせが行われた7月下旬、主演の新谷ゆづみ、共演の葉月ひまり、岡本に話を聞いた。

ニュース記事でトー横キッズの存在を知ったという岡本。気になって調べる中で、若者たちがストロング系缶チューハイを手にはしゃぐ姿を見て「理由はわからないけど泣いてしまった」という。
「感情を揺さぶられて、劇を書こうと思ったんですが結局、ニュースを見て感情移入すること自体、大人の目線なんです。実際にリサーチをしてみると、ただ楽しくてそこにいる若者たちのコミュニティがあるだけでした。みんな、明るくそこにいるのに、ニュースではそれが捨象されて“かわいそうな子たち”となってしまう。だからこそ演劇という形でニュースからは聴こえない彼らの“声”を伝えたいと思いました。作家として彼らの“文体”や話し言葉を文字化できるという自信もありました」。

スマホと充電器だけを手に歌舞伎町にやってきた15歳の主人公・こっこを演じる新谷は「未成年、思春期という縛りの中で、『自由になりたい』、『でも大人は自由にさせてくれない』という葛藤は誰もが持っていると思うし、彼らの場合、その場所が歌舞伎町だったけど、どこでもありうるし、私も似たような気持ちを抱えていたことがあります。どうすればいいかわからないし、大人になるのを待つしかないから『いま、この瞬間を楽しもう』となる気持ちもわかります」と刹那を生きる登場人物たちの心情を語る。

こっこに“界隈”を案内する、性自認が男性の14歳・夢露(めろ)を演じる葉月も「自分が中学生の頃はそこまでSNSもなかったけど、いまは『寂しい』とつぶやけば『話聞くよ』という人たちがいる。時と場所が違えば、些細なきっかけで自分もトー横キッズになっていたかもしれない」と語る。だからこそ、彼らを異質な存在として捉えるのではなく「寄り添って演じたい」とも。

再演に当たり、新たに2人の“大人”が登場人物に加わるのもポイント。どこか怪しげながらも子どもたちと積極的に交わり、彼らを導くゼウスとNPO法人の理事として若者たちをケアしようとする畑中。異なるアプローチで子どもたちに向き合う2人だが「大人の視点が入ることで、観客の大人たちも『自分はどう子どもたちを見るのか?』と問われる」(岡本)。

歌舞伎町と目と鼻の先の劇場でどんな物語が描き出されるのか。楽しみに完成を待ちたい。

取材・文:黒豆直樹