不老不死となって千年の時を生きていた、ふたりの男。そして幾度も転生を繰り返している少女。『僕らの千年と君が死ぬまでの30日間』は、映画・舞台・漫画のメディアミックスでさまざまな角度から、数奇な運命で結ばれた彼らの姿を描いている。物語の起点となる平安時代の彼らを描いた漫画は8月に単行本第4巻が発売され、「THEATRICAL LIVE」と銘打った舞台は9月に上演。そして彼らの物語の行き着いた先を描く映画が、10月27日(金)より公開される。
映画は『ハローグッバイ』『望郷』などの菊地健雄監督がメガホンを取り、ダークでサスペンスの要素もありながら、どこか神秘的で切ない仕上がり。442年ぶりに惑星食と同時に見られた皆既月食を撮影したカットも使用され、より幻想性を高めている。
しかし、主人公・草介を演じた辰巳雄大(ふぉ〜ゆ〜)らによれば、設定こそファンタジックであるものの、登場人物、そして役者の心情に寄り添った撮影で、「登場人物のドキュメンタリーであり、ある意味、役者のドキュメンタリー」だと感じたそう。
過剰にドラマ性を出さず、ナチュラルな芝居を追求する。映画だけでなく、舞台でも同様の試みがなされるらしい。客席にはっきり伝わる発声ではなく 「マイクに頼ってぼそぼそ言う芝居をやってみたい」と、上演台本・演出を担当する鈴木勝秀は辰巳たちに伝えたそうだ。
キャストは草介役の辰巳と光蔭役・浜中文一、とわ役・菅原りこ、八百比丘尼役・AKANE LIVの4人のみ。かなりのボリュームのセリフで、なおかつ歌もある。浜中は「僕が歌うのはちょっとだけ」と笑うが、辰巳によれば「その分、光蔭さんが草介をどう思っているのかということも含めて、文ちゃんはセリフをめっちゃしゃべる」。各人の目線で見た平安時代の出来事、そして彼らの内に巻き起こる感情や想い。ロックのサウンドと共に、どう描かれるのだろうか。
舞台で描かれる物語はそこで一旦ピリオドを打たれ、そして映画へと続く。もちろん、それぞれ独立した作品として楽しめるが、両方見ればより深く味わえるはず。浜中も「舞台で草介と光蔭がこうだったから映画ではこうなったんだ、って思ってもらえるのが一番いい」と語る。まさに対になっている作品なのだ。
そう考えると、やはりこの公演を映画鑑賞前に観ておきたい。
公演は9月8日(金)~18日(月・祝)品川プリンスホテル クラブeXにて。その後、大阪公演あり。
取材・文:金井まゆみ