孫悟空を中心に、三蔵法師一行が天竺を目指す物語『西遊記』。1978年には堺正章主演でドラマ化され、一大ブームを巻き起こした。そしてこの度、『西遊記』が新たに令和版として堤幸彦の演出で舞台化されることが決定し、主役の孫悟空を片岡愛之助が演じる。そこで堤と愛之助に、本作にかける想いを訊いた。
実は今回の舞台化、堤の念願の企画だったと言う。「数年前からぶつぶつ独り言のように、『西遊記』をやりたいと言い続けていたんです(笑)。それがこのようなかたちで舞台化するチャンスをいただき、大変ありがたいと思っています。さまざまなキャラクターが登場する『西遊記』は、単にその面白さだけでなく、人のおかしみ、さらには人間の産物である妖怪たちの面白み、悲しみ、切なさも描かれた作品。自分にとって非常にやりがいのある舞台になると思います」
ドラマ版のファンだったという愛之助は、今回のオファーに…。「本当にビックリしました! 子供のころに見ていた『西遊記』を、しかも映像でなく舞台でやるなんて。ただ演出が堤さんだと聞いた瞬間、これは出来るに決まっている、と(笑)。あの世界観を崩さず、それ以上のものを作れるのは堤さんしかいないと思います。今はその期待しかないですし、そこに孫悟空として参加させていただけることに、非常に幸せを感じております」
同じく堤が大きな期待を寄せているのが、愛之助演じる孫悟空に対してだ。「歌舞伎というのは、江戸時代から多くの人を喜ばせるエンターテインメントの究極ですからね。そこに僕らはまだまだ及ばないわけで、やはり愛之助さんの力を借りたいなと。つまりLEDなど最新鋭のテクノロジーを使いつつ、役者さんたちの肉体を駆使した集団芸もふんだんに盛り込む。それは今まで僕がやってこなかったジャンルでもあると思いますし、ぜひ愛之助さんには頑張っていただきたいと思います」
堤の熱いまなざしに苦笑いを浮かべつつも、やはり孫悟空というキャラクターは、役者にとって魅力あふれる役どころのよう。「切り込み隊長ですから、お師匠様に緊箍児(きんこじ)で締めつけられつつも、大暴れしたいなと思っております(笑)。孫悟空という役どころ自体、非常に傾(かぶ)いていると思うんです。そして最先端で面白い、いわゆるけったいなことをしている堤さんは、まさに傾(かぶ)き者。ゆえに想像を超えた舞台になると思いますので、ぜひご期待いただきたいと思います」
取材・文:野上瑠美子