新国立劇場にてシェイクスピアが同時期に執筆した『尺には尺を』、『終わりよければすべてよし』の2作のダークコメディが交互上演される。8月31日、制作発表会見が行われ、演出の鵜山仁をはじめ、岡本健一、浦井健治、中嶋朋子、ソニンら総勢20名が出席した。
この2作は“ダークコメディ”に分類され、同時代に執筆された表裏一体をなす2作とも言われる。シェイクスピア作品には珍しく女性が物語の主軸となっているのも特徴。
問題作とも称され、“ベッド・トリック“(相手を欺き、期待した相手とは違う相手とベッドを共にさせる仕掛け)が入っている両作の同時上演について、鵜山は「人間は必ず過ちを犯すけど、愛がそれを救済できるのか? というのが大テーマ」と語る。
2009年の『ヘンリー六世』から2020年の『リチャード二世』まで、新国立劇場にてシェイクスピアの歴史劇シリーズを作り上げてきたカンパニーが再結集。キャスト陣はいずれもこのカンパニーで再びシェイクスピアをできる喜びを口にする。
岡本は「いろんな権力者や市井の人々が出てきますが、政治家や国を動かす人たちにもぜひ足を運んでいただきたいです。いろんな過ちや発見、何が大切なのか? といったことが詰まった作品になっている」と言葉に力を込める。
浦井は2009年に『ヘンリー六世』でこのカンパニーに参加した時のことをふり返り「(亡くなった)渡辺徹さん、中嶋しゅうさん、金内喜久夫さんら諸先輩方と並んで『浦井って誰なの?』という感じで、僕は公開処刑のような形でここに座ったまま何もできずにいました(苦笑)。そういう先輩たちの思いや存在の価値を感じながら、この2作上演という過酷なトライに挑めることを幸せに思いながら演じたいと思います」と語る。
中嶋は2作交互上演について「それぞれ単体で読むより、2本をいっぺんに読むと、見えてくる世界が違ってきて、それはマジックだと思うし、それを肉体を使って届けるのが楽しみで仕方ないです」とその意義を強調。ソニンは「読めば読むほどシェイクスピアの描く女性は難しい!」と苦笑い。今回の2作、さらに過去に出演したシェイクスピア作品のいずれでも“貞淑な処女”の役だったことに触れつつ「欲とか人間臭さを秘めて、それが透けて見えるような女性像を作っていけたら」と意気込みを語っていた。
『尺には尺を』、『終わりよければすべてよし』交互上演は10月18日より新国立劇場中劇場にて開幕。
(文:黒豆 直樹)