博多座が15周年を迎えるにあたり、これからの伝統芸能の継承にふさわしい演目をそろえ「二月博多座大歌舞伎」を開催。江戸の荒事、上方和事、舞踊、時代物とバラエティに富んだ、幅のある作品により、華やかで奥深い歌舞伎の世界を楽しむことができる。公演を前に、中村橋之助が思いを語った。
「このメンバー4人(翫雀、扇雀、橋之助、錦之助)ですと、今まで『若手花形歌舞伎』と書いてありましたが、ついに『大歌舞伎』にしていただきました。まだおこがましくありますが、このメンバーで古典で芝居を開けることは、たいへん嬉しいことですね、もちろん責任もあるなと感じます」と、笑顔の中にも真剣な表情で語り始めた中村橋之助。「過去には、芝居を楽しんでいいのか、苦しんでいいのかという深いトンネルの中に入ったこともありましたが、40を超えたあたりから、やっと物事が地に着いたというか、先輩方がおっしゃったことが分かるようになりました。いろんな役を務めるたびに、歌舞伎という演劇の奥深さを感じます」(橋之助)。
昼の部の荒事『御摂勧進帳』では、スーパーマン的存在だという弁慶を演じる。自身3度目となる演目だ。残虐なシチュエーションだが、それをコミカルに見せるのが、歌舞伎のおおらかさ、楽しさだという。上方和事の『封印切』は、関東の役者からすると外国語劇に出演しているような難しさで、八右衛門の役は今回が2度目のチャレンジとなる。舞踊の稽古中にひょんなことから力が抜けて、踊ることが楽しくなったのをきっかけに、演じてみたいと思った『奴道成寺』。今回初役に臨む、その思いは強い。「どうしてもこの役をやりたいと、毎晩のように松竹のプロデューサーはじめたくさんの人にお願いしました。やりたいと言ってもなかなかやれないのが常ですが、ある瞬間ふっと相思相愛になる瞬間がある。宝くじが当たるようなものです、博多座さまさまですね」(橋之助)。
今回は、歌舞伎を観たことがない方が劇場に足を運んでも親しみやすい演目がそろっている。「博多座で今まで上演しなかった作品を選ぼうということで、とてもいい狂言立てが並んだと思います。歌舞伎を支えてくださる今までのファンを魅了するとともに、これからのニュー歌舞伎ファンをつくるのも僕たちの使命だと思っています。特に荒事は、長くて難しくってということと対極にあって、マンガを見るような面白さだと思います。歌舞伎のコスチュームってすごいんですよね、生で見ると迫力がありますよ」(橋之助)。
公演は2月2日(日)から25日(火)まで、福岡・博多座にて。チケットは発売中。