舞台「新宿羅生門」が9月22日(金)、こくみん共済coopホール/スペース・ゼロ(東京・新宿)にて幕を開けた。
同名のNintendo Switch専用ソフトが発売されるにあたり、ゲームのリリースに先行して舞台として上演される本作。幕末の新徴組の隊士や勤皇の志士など、志半ばで無念の死、非業の死を遂げた者たちの子孫が、“血伝継承”と呼ばれる覚醒を起こし、次々と前世の記憶に目覚めはじめ、新宿を舞台に再び戦いに身を投じていく…。
“幕末”と“転生”、“妖刀”など、人気の高い要素をしっかりと取り入れ、華麗な殺陣も見どころの本作だが、ストーリー上の巧みさが光るのが、キャラクターの人選。主人公の沖田洸(中島健)の前世は、誰もが知る新選組の沖田総司…ではなく、その義理の兄であり、江戸の市中見廻りを務めた新徴組に参画した沖田林太郎。また、洸を仲間に迎える勝覚悟(橋本全一)の前世はあの勝海舟…ではなく、その父親の勝小吉。同じく仲間のひとりで医師でもある中沢颯(瀬戸啓太)の前世は、新徴組唯一の女性隊士として名を残した中沢琴。3人とも歴史上の人物とはいえ、決してメジャーとは言えない存在だが、そんな彼らと沖田総司、土方歳三、桂小五郎、西郷隆盛、岡田以蔵、坂本龍馬といった“超メジャー”な人物たちの運命の交錯が描き出されており、コアな歴史ファンもしっかりと唸らせる物語構成となっている。
言わずもがな、幕末の志士たちが、スタイリッシュなスーツ姿で刀を手に斬り合うというビジュアルのインパクトも大。元新選組の3人(沖田、土方、芹沢)が“ブラッディーオーガズム”を名乗るアーティストとして活動し、ライブで「復讐リバイバー」なる楽曲を歌い上げるなどアクション以外の部分でも魅せてくれる。
警察組織であり洸や覚悟、颯が所属する「新徴組抜刀隊」、自衛軍を後ろ盾とする「戒援隊(かいえんたい)」、現政権を後ろ盾に幕府側の覚醒者の存在に目を光らせる「薩長エージェンシー」、そして新選組の覚醒者の隠れ蓑として表向きは芸能事務所として活動している「神誠プロダクション」など、立場や思想ごとに複数の組織が林立し、登場人物も多いが、俳優陣がいずれもそれぞれの個性とビジュアル活かし、しっかりとキャラクターを立てて演じており、複雑になり過ぎずに楽しめる。
新宿によみがえった怨念の行き着く果ては――。
「新宿羅生門」はこくみん共済coopホール/スペース・ゼロにて上演中。
取材・文:黒豆直樹