
1987年に日本で刊行された伝説のSF小説を映画化した『エンダーのゲーム』が公開になるのを記念して、各所で“再誕プロジェクト”と題した企画が行われている。映画だけでなく、コミック、ラジオ、イラストなど他ジャンルを巻き込んだ本企画はなぜ生まれたのか? 映画の宣伝プロデューサーを務めるウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社の百合草太郎氏に話を聞いた。
百合草氏が『エンダーのゲーム』に関わり始めたのは昨年初頭のこと。「小説を読み始めて、少年の心の描写に特化されていたので古くさくなかったし、SFっぽくなくて、むしろ日本のアニメっぽいなと思ったんです」。そこで氏はまずアニメ好きの知人やアニメ関係者にヒアリングを行った。「話をするときにあえてタイトルを伏せて、キャラクターと物語を話したんですね。するとみんなが『それは面白い!』って食いついてきたんですよ」
彼らの熱い反応を受けて、百合草氏は“映画”の宣伝を公開直前までしない、という大胆なプランを思いつく。「映画のビジュアルを抜きにして、まず純粋に『エンダーのゲーム』というコンテンツを知ってもらいたかったんです。だから紹介するのは“絵”でもいいし、キーワードでもいい。情報を自分から取りに行く人がそれをキャッチしてくれて、自由に検索してもらうことで世界が広がってもらえば、と」。そこでイラストレーターの秋赤音がイメージイラストを制作し、2013年夏のコミックマーケットに巨大タペストリーを掲出したり、アニメショップなどにリーフレットが配布された。
さらに映画会社の社員だけでなく、メディア関係者や出版者のスタッフなどを集めてプロジェクトチームを結成。「こういう物語とキャラクターがあって、小説と映画がある。他に何ができるか“発注”ではなく、積極的にアイデアを出してくれる人を集めました」。その結果、2013年冬のコミックマーケット企業ブースへの参加や、歌い手×ボカロPとのコラボ楽曲企画、佐藤秀峰によるコミック化、ラジオドラマ化、人気声優が集結した日本語吹き替え版の制作などが決定した。
映画の見どころやセールスポイントを、メディアを通じて“説得”するプランではなく、ファンが自由に検索し、想像し、創造できるプランは外国映画ではこれまでになかった。「映画会社は“映画”を売ろうとするけど、若い人は“面白いコンテンツ”が映画館で上映されているので観に行ってるんです。だからこの映画も『映画だけどアニメっぽいね』と面白がれる人に楽しんでもらいたいですし、常に根底にあるのは『こんなにも面白い話があるのに乗らないのはもったいない』ってことなんです」。
『エンダーのゲーム』
1月18日(土)公開