これまでも映像化、アニメ映画、舞台化されてきた筒井康隆の傑作SF小説「時をかける少女」が初のミュージカル化をされる。10月6日に迎える初日に先駆けて、衣装付き通しを行っている稽古場を取材した。
科学実験室で不思議なラベンダーの香りを嗅ぎ不思議な力を手に入れた主人公・芳山和音。その力を使い、未来から来たタイムトラベラー・深町一夫と時空を超える冒険に出た先で、織田信長、森蘭丸そして過去の家族に出会い……。原作「時かけ」のストーリーをアレンジしながら、新曲17曲で彩った新作ミュージカルとなる。
この日は初の衣装付き通し稽古。冒頭キャッチ―なナンバーからスタート。総勢12名のアンサンブルを含めたフルメンバーでオープニングを盛り上げた。
見学中、とにかく圧倒されるのはその楽曲のボリューム。上演時間2時間の内、新曲は17曲。和音、幼馴染の吾郎、友人の真理子と3人で恋について歌うかわいらしいナンバーから、信長・蘭丸で未来への希望を歌った壮大な楽曲、タイムトラベルで能力を手に入れたことで過去に向き合った和音が歌うバラードと、バラエティに富んだ構成で物語を飽きさせること無く進めていく。
主演の田中梨瑚は、より現代の女子高生らしく描かれる主人公・和音を好演。過去・深町と関わりのあった戦国時代の娘・イサキとの二役と、ほぼ舞台に出ずっぱりながら、元気なキャラクターはもちろん、家族との関わり、初恋に揺れる様子を繊細に演じた。そしてこちらも実質二役となる蒼木陣。和音に振り回される深町、そして時間旅行を生み出した研究者ケン・ソゴルと、現在・過去・未来を行き来する、最も「時をかける」人物を確かな演技力で熱演した。和音の友人・真理子を演じるのは、特別出演となる天翔愛。これまでにないコミカルな演技に挑戦しながら、伸びやかな歌声を披露するソロナンバーは必見だ。和音に淡い想いを寄せる幼なじみ吾郎を演じる小川優の不器用でピュアなキャラにも注目してほしい。
さらに物語を盛り上げるのは織田信長役・多田直人(演劇集団キャラメルボックス)、森蘭丸役・西井幸人。タイムトラベル中に出会う二人が知る歴史に隠された新真実…?
ラストには映画版の主題歌「時をかける少女」も披露。どこか切ない記憶で終わる「時かけ」だが、ミュージカルだからこその爽やかなエンディングは今作ならでは。本番では映像演出も加わるという本作、ぜひ劇場でその完成形を確かめてほしい。
公演は10月6日(金)から10日(火)まで日本橋劇場[日本橋公会堂]にて。チケット発売中。