落合モトキ(Photo:Fujimoto Kazuhito)

 リアルとバーチャルの境界が曖昧になった世界でARアプリのカリスマ少女にのめり込んでいく男の姿を描いたミステリー『鯨の骨』が10月13日から全国公開される。『ドライブ・マイ・カー』で脚本を担当した大江崇允が監督をしたこの映画で、不思議な世界に巻き込まれていく間宮を演じた落合モトキに、映画への思いや演技について聞いた。

-とても不思議な感じのする映画でした。最初に脚本を読んだ印象はどんな感じでしたか。

 「ミミ」というアプリが出てきて、その中にいる明日香を求めていく話なんですけど、途中から明日香と普通に会話をし始めたりしたので、脚本を読んでいる限りでは、「(明日香と)前に会っているのかな」と思ったりして、結構クエスチョンマークが多かったんですが、 1週間のリハーサル期間で、(大江崇允)監督に疑問をちゃんとぶつけることができ、解釈できた状態で現場に臨むことができました。

-大江監督の談話に「落合さんには、加害者、被害者、傍観者を同時に表現してほしい」とあったのですが、その辺りの話はしましたか。

 監督からそう言われましたが、それほど意識はしなかったです。いざカメラの前に立ってみたら、その場の状況に応じて、間宮の心情を考えながらできました。演じてみて分かったのですが、被害者でいる方が楽だなと思いました。被害者でいれば、加害者に当たってもいいし、被害者面をして傍観していれば、周りが「どうしたの」って言ってくれるし、被害者って楽だなと思いました。

-明日香役のあのちゃんの印象はいかがでしたか。

 やる前は、コアなバラエティー番組によく出ている方だなと。それでちょっと変わった子なのかなと思っていました。でもリハーサル期間中に一生懸命本を読んで、彼女なりの表現をし、監督とセッションをして、あの明日香というキャラクターを作り上げていました。仕事に対して前向きで真剣に取り組んでいる姿勢にイメージが変わりました。

-落合さんは、子役からキャリアが長いですが、ターニングポイントになった時などに、自分はこうしたから切り抜けられたとか、成長できたと思うようなことはありますか。

 何回か、自分の仕事にもターニングポイントがありましたが、どれも現場が楽しかったんです。悩むことも大切だと思うんですけど、結局は悩み切って、楽しむことしかないんじゃないかなと思います。その状況を見てすぐに楽しむ。そうすると、何かが見えてくる感じがします。あとは、日々何をしているかじゃないですかね。日々、体たらくな生活をしていたら、いい絵には映らないと思うので。日々の生活がそのまま演技とかにも反映されるという感じです。大切なのは、そういう細かいことの積み重ねじゃないのかなと思います。

-映画の見どころなどを含めて、観客の皆さんに向けて一言お願いします。

 出演者のキャラクターも面白く、すごく見やすいと思います。若い人には、最先端を行っているアプリの楽しさもあるけど、それに通じる恐怖もあるというところを考えてもらえたらと思います。あとは、最後の喫茶店のシーン、ラストカットが監督の一番こだわったところなので、注目していただけたら。あのちゃんのエンディングテーマ曲も楽しんでもらえたら。

(取材・文/田中雄二)