『イッセー尾形一人芝居』が11月25日(土)~26日(日)に神戸朝日ホール(神戸市中央区)、12月1日(金)~3日(日)に有楽町朝日ホール(東京都千代田区)で上演される。
市井の人々のわずかな出来事を瞬間的にとらえ、豊かに展開させる一人芝居。一人芝居の第一人者とも言うべきイッセー尾形は「自分の本分は一人芝居にあると思っていますから、それを定期的にやらせてもらえることは、やっぱりありがたいなと思います。僕としても1年の最後には“有楽町”があることが一つの節目で、次の年にまた乗り出していくサイクルになっています」と話す。
芝居の中で描かれる人物はバラエティ豊か。どのように造形しているのか尋ねると、意外にも人間観察はしないという。「昔はね、観察をしにいったこともあるんですけど、面白くないんです。でも、観察した“風”に作った方がはるかに面白いと気づいてからは、僕の頭の中で人間を作っている。例えば〈頭を叩かれたから痛い〉〈喉が乾いたから水を飲む〉といった行為は万人の常識でしょう?だから、これを外すわけにはいかない。一方で、僕の知らないルールもいっぱいある。それは何なのだろうと想像していくことで、ネタができていく」といい、「それに、舞台上に出てきた人間が面白ければいいわけです。僕が人間観察をしたか、していないかという出処はどうでもいいんですよ、お客さんにとってはね」。そうして本番のギリギリまでネタを練る。「一番最後に思いついたものが一番面白いと信じている」からだ。
今回の公演は、今年4月に近鉄アート館(大阪市阿倍野区)で立ち上げたネタを“成長”させていくという。「このネタはどこが面白かったのか。一旦引いて考えてみてね。どれだけネタが成長したか、あるいは成長しつつあるかを見て欲しい」と語った尾形。そして、「時代はますます混迷していくでしょうが、それに似合ったネタ作りになってくると思うんですね。混迷してるからこそ、半混迷のネタではなくて、時代より混迷したネタを作ってやろうと思って。で、それがちゃんとコメディになるようにしたい。笑うこと自体が一つの認識ですから。時代を笑ってやりたいですね」とも話し、まだまだ衰えない創作意欲を見せていた。
取材・文:五月女菜穂