池田エライザ (ヘアメーク:豊田健治/スタイリスト:Shohei Kashima(W) (C)エンタメOVO

 俳優、歌手、ファッションモデル、映画監督、タレントと多方面でその才能を見せる池田エライザ。20日から公開される映画『おまえの罪を自白しろ』では、娘を誘拐されてしまう、政治家一族の宇田家の長女・麻由美を演じる。池田に本作での役作りや撮影現場のエピソードについてなどを聞いた。

ー本作は、政治家一族の孫娘が誘拐され、犯人から身代金ではなく「記者会見を開き、おまえの罪を自白しろ」という要求をされるタイムリミットサスペンスです。最初に脚本、または原作を読んだときの率直な感想を聞かせてください。

 どの役を演じるのかを分かった上で読んだので、自分の娘が誘拐されてしまったという喪失感を感じて、すごくドキドキして、苦しくて、手も震えて…でも、読み進めずにはいられず、とてもしんどかったのを覚えています。

ー最初からかなり役に感情移入できていたのですね。

 そうですね。事前にこうした役どころだということを聞いて読み始めたら身構えていたかもしれませんが、役名だけを聞いて読み始めたので、身構えることなく読むことができました。もちろん本の構成もすばらしいですし、麻由美についても物語の中でとても丁寧に描かれていることが伝わってきましたし、彼女の痛みを感じながら読みました。

ー役作りにおいては、娘を誘拐されてしまったという気持ちをどのように自分の中に落とし込んでいったのですか。

 私は、子どもを産まないと母性を感じられないわけではないと思います。ただ、産んだ経験がある方は共通する何かを持っているとも感じています。そういう意味で、自分は子どもを産んだ経験がないからこそ、分からないところはあるとは思います。役作りという意味では、クランクインまでの間に、メークさんが連れてきていたお子さんを観察したり、自分の母親を観察したりして役を作る助けにはしていましたが、何よりも自分の中からあふれる母性がつらくて仕方なくなるくらいだったので、その気持ちを大事にしました。

ー実際に母親役を演じてみて、どんなことを感じましたか。

 私が感じている思いを人に伝えるためには、“事実”を作っていかなければいけないと思ったので、現場にいるときは(佐藤恋和が演じる娘の)柚葉の愛しい部分をたくさん見つけていました。そもそも、柚葉はすごくラブリーな子なので、話しているのも楽しかったですし、大切な時間を積み重ねられたと思います。お家のセットの中に柚葉が描いたであろう絵が飾ってあったので、そうしたものを一つ一つ宝探しのように見つけて、触れて、自分の中で記憶を作っていって、思い出を構築していく時間を作品が始まってからもずっとやっていました。でも、それは決して苦ではなかったです。すごく愛おしい時間でした。

ー今作を通して、役者として新たな発見はありましたか。

 今回、待機している時間に、家族(役のキャスト)みんなで畳の上で過ごして、お話をすることが多かったんですよ。都心から離れた場所でロケをしていたということもあると思いますが、つながりを感じることができて、そうした空間はすごく大切なんだなとより感じました。

ーそこでは、どんな話題でも盛り上がったのですか。

 お父さん(役の堤真一)が道の駅で野菜を買ってきていたので、「何を買ったんですか?」「とうもろこしだよ」みたいな話をしたり(笑)。お兄ちゃんたち(中島健人と中島歩)は音楽が好きなので、音楽の話をすることが多かったですね。

ー堤さんと中島さんの印象や、芝居を通して感じた俳優としての魅力を教えてください。

 堤さんは、ものすごく“お父さん”という感じでした。普段、関西弁を話されるのですが、少し荒っぽい感じでお話しされるのも、不器用そうなところも、“お父さん”という感じがしました。ただ、お芝居をすると威厳があって、怖いところも理不尽なところもあるけれども尊敬できる“お父さん”でした。堤さんも中島さんも、それぞれの役の役目を担って、そこにいてくれた気がします。だから、役のイメージとご本人の印象がそれほどかけ離れていないんですよ。(中島健人が演じた)晄司は年子や双子のような距離の近さを感じさせてくれるお兄ちゃんでいてくれて、カメラが回っていなくてもその現場にいる時間全てが作品につながっているような感覚がありました。それは、彼らの配慮であり、技術であると思っています。

ー完成した映画を見た感想を教えてください。

 すごく面白かったです。撮影中は切なくて、苦しくて、自分のことをふがいないとずっと思っていましたが、いざ映像になったものを見てみると、ワクワクする映画になっていて、初めて自分のシーンで涙が出るという経験もしました。それ以上に巧みな編集と音楽と映像のギミックがあって、まるでジェットコースターに乗っているような気分でした。

ー本作ではある選択によって人生が変わっていく姿を描いていますが、池田さん自身の人生に影響を与えた作品や出来事はありますか。

 ジョルジュ・サンドの『愛の妖精』という作品です。双子の物語を主軸とした作品ですが、私はそこに出てくる見た目が衛生的に汚いと言われて仲間外れにされている女の子が大好きなんです。薬剤師であるおばあちゃんと一緒に住んでいるせいで、魔女の娘と言われてしまいますが、本当は誰よりも信心深くて、心がきれい。双子の兄弟は、彼女と触れ合うことでそれを少しずつ理解していくという、シンプルだけど絶対に忘れてはいけないことが描かれている作品だと思います。見た目に惑わされないできちんとその人を見て、尊敬したり敬ったりする気持ちを大事にしたいと思わせてくれます。今も心を洗いたくなったら読む作品です。

ーでは、本作のタイトルにちなんで、池田さんが最近、「罪だな」と思ったエピソードを教えてください。

 特にダイエットをしているわけではないんですが、この間、風邪をひいてしまったときに、朝昼夜とステーキを食べました(笑)。風邪をひくと、とにかくお腹が空くんです。それで、サラダも食べず、とにかくステーキ(笑)。その翌日も吉野家で牛丼を食べて…風邪をひいた1週間くらいは、毎日がチートデーのような食生活を続けていました。すごく罪悪感があったので、それを告白させてください(笑)。

ーところで、池田さんは俳優としてのみならず、歌手、モデル、映画監督とさまざまな活動をしていますが、今後の芸能活動の展望についてはどう考えていますか。

 これからどんなことが起こるか分からないので、断定はしたくないと思いますし、自分が数年後に何をしていたいかを明確に考えているわけではないですが、その都度自分ができる範囲で人の役に立つことをしていけたらいいなと思っています。決して引退宣言ではないですが、私は表現することだけが人の役に立つことだとは思わないんですよ。今、自分が手にしているもので最大限力になれることはなんだろうと考えたときに、表に出ることだというだけであって、世の中が変わればまた別の形で力になれるように勉強し続けることが大事だと思っています。

ーそんな池田さんの原動力は?

 感動的な話ができればいいのですが、本音を話せば…“世田谷ベース”を作りたいという思いです(笑)。だから頑張って働いていますし、それが直近の目標です。家族や動物たちのために、おもちゃ箱みたいな場所がほしいなと思っています。

(取材・文・写真:嶋田真己)

 映画『おまえの罪を自白しろ』は、10月20日から全国公開。

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