撮影:五月女菜穂

シェイクスピアの“ダークコメディ”交互上演『尺には尺を/終わりよければすべてよし』が新国立劇場中劇場で開幕。初日を前に同劇場で会見が行われた。

『尺には尺を』と『終わりよければすべてよし』の2作品は、シェイクスピアの戯曲の中ではそれほど上演回数も多くなく、どちらも最初の全集では“喜劇”に分類されるも、ストーリーもやや複雑で登場人物も屈折したキャラクターが多く、“ダークコメディ(暗い喜劇)”と呼ばれている。

この2作品は時をおかず執筆されたと推測され、ストーリー的にも同じテーマを持つ表裏一体のような戯曲。悲劇とも喜劇ともつかないその結末から「問題劇」とも分類される2作品を交互に上演することで、現代劇かとも思わせるシェイクスピアの鋭い視点と同時代性が浮かび上がる。演出の鵜山仁は「今まで見ていなかったことに目がいったり、圧倒されていたことが実は薄っぺらいものだと分かったり、いろいろな意味でストレッチできるので面白い。正解が何かが分からないことがいいし、人生そのものという感じがする」とコメント。

初日を迎える心境を問われると、岡本健一は「2本同時に稽古をやって、やっと初日を迎えることができるが、正直全体像が全く見えない。お客さんが入って初めて成立するものではないかと思う。問題作と言われている作品をお客さんがどのように捉えるのか。劇場で体験してもらいたい」と話す。ソニンは「2ヶ月間稽古をして、2倍大変なのかなと思っていたら、4倍大変だった。稽古初日から足を止めず、セリフを喋り続け練習をしてきたけれど、『まだ足りない』とずっと思いながら稽古をしてきた。『2倍』の2乗の『4倍』の2乗で、16倍味わい深い本番になったら」。

新国立劇場が2009年~20年に展開した「シェイクスピア歴史劇シリーズ」のチームが再結集している本作。浦井健治は「節度は持っているが、家族のような人が集まっている。10年以上一緒にやらせてもらっていて、亡くなった方もいるが、面影や思いを板の上で感じる瞬間がたくさんある」といい、中嶋朋子も「みんながぽろっと言ってくれる一言で、すごく大きな転換が訪れたり、目から鱗が落ちたりするカンパニー。その一言を待っている自分がいる。この信頼関係は本当に宝物」と語っていた。

公演は11月19日(日)まで。

取材・文:五月女菜穂