市川染五郎が、祖父・松本白鸚が昭和48年に上演して以来しばらく上演が途絶えていた鶴屋南北作の『心謎解色糸(こころのなぞとけたいろいと)』を2月の歌舞伎座で41年ぶりに復活させる。本作にかける意気込みを染五郎に訊いた。
「『心謎解色糸』は“プレゼン大王”と呼ばれてるんです(笑)。『これを上演したら面白いんじゃないか』って何度も話題には上がるんだけど、結局選ばれない。でも鳶や芸者といったカッコいい存在が登場したり、途中で死んだ人間が生き返るところがあったりして魅力的なんですよ。ただ話が複雑で……」そこで、大幅な書き換えを前提に上演が決まった。脚本や演出に対して、染五郎のふんだんな提案が盛り込まれる。「まず物語を明確にしようと思っています。色彩的にはそれほど華やかではない芝居ですが、たとえば殺しの場面では綺麗な立廻りで見せるとか、祖父もチャレンジしたひとり二役を早替りで演じるなど、趣向を全面に出すような芝居に書き換えています」
染五郎が演じるのは江戸の華・鳶の左七と悪事を働く九郎兵衛の二役。「かなり凝って作ったという前回のとても素敵な衣裳が二着残っていたので、今回それを着ます。祖父が上演したときも数十年ぶりの復活だったんです。だから僕がこうして復活するのも何かの因縁かなと思います」
受け継ぎながら変えていくこと。それは、染五郎の強い思いからきている。「自信があるわけじゃないけれど、僕らの世代が柱にならなくては。もちろん古典の傑作を傑作としてきちんとお見せすることも必要。その一方で新しいものを今創ることも大切だと思っています。作品の復活も、頻繁に上演されるような面白いものを創ろうという覚悟がないとやれません。どうせなら同じ南北の『四谷怪談』にとってかわるような作品になることを目指します」
公演は2月1日(土)から25日(火)まで東京・歌舞伎座にて。チケット発売中。なお、インタビューの全文は1月23日(木)発売の「SODA」(ぴあ)に掲載。
Text:釣木文恵