INMホールディングスの畑野仁一会長

仮想通貨に賛否両論が飛び交うなか、INMホールディングスがICO(イニシャル・コイン・オファリング)を実施、ブロックチェーン技術を用いて世界で最も安全で革新的な「トークンエコノミー」の構築に乗り出した。2018年10月をめどに、独自仮想通貨「ビットマイル」のサービスを開始する予定だ。同社は、業界に先駆けてインターネット上の共通ポイントサービスをつくりあげたネットマイルを傘下にもつ。なぜ、仮想通貨の領域に踏み込んだのか。「成功のカギは『流通』」と話す、INMホールディングス会長でネットマイル創業者でもある畑野仁一氏に、参入の背景、描く未来像を聞いた。(BCN・佐相彰彦)

――仮想通貨を発行する新会社を設立、ICOを実施してトークンエコノミーを構築すると発表しました。インターネット上の共通ポイントサービスをつくりあげたネットマイルが仮想通貨の領域に入ることに対して、どのような反響がありましたか。なかには、あまり仮想通貨にいいイメージをもっていない方もいらっしゃったかと思いますが。

畑野 当社は、一般的にいわれている仮想通貨交換業者になるわけではなく、新しいサービスモデルをつくることが目的です。この考えが、ぶれることはありません。確かに、仮想通貨を取り巻く環境はざわついているので、影響がないとはいい切れませんが、サービス開始時には会員に対して仮想通貨のビットマイルを無償で付与します。他社のような投機的な通貨ではありません。しかも、ネットマイルで共通ポイントサービスのプラットフォームを提供している点で、非常に高い評価を得ています。

――そもそも仮想通貨の領域に入った背景は?

畑野  ネットマイルを設立してから、ポイントサービスを通じてさまざまな仕組みを提供してきましたが、仮想通貨への参入はその一環です。実は当初、ポイントサービスではなく、仮想通貨を提供したいと考えていたんです。ただ当時は、「仮想通貨って何?」と誰もわかってくれなかったんです。それが、ブロックチェーンが普及し始めて仮想通貨が登場し、やっと当社に時代が追いついてきたと実感しています。自分のもっているポイントをほかのポイントと交換するというのは、法定通貨を仮想通貨に交換することと何ら変わりがない。仮想通貨の領域に入るのは、最近になって考えたことではないんです。仮想通貨を提供したかったけれども、ポイントサービスの提供にとどまったということです。

――ビットマイルの強みは何ですか。

畑野  基本的にビットマイルは会員に無償で提供するものなので、通貨価値が下がるという問題はありません。100%、いや120%、安心・安全です。しかも、他社のように投機目的で通貨を購入してもらうというわけではなく、当社はプラットフォーム上でビットマイルを流通させることを目的としています。すでにポイントはプラットフォーム上で流通している。仮想通貨も同様に流通させるだけですので、成功することは間違いない。

――ビットマイルを無償で配布するということは、このビジネスでの収益確保が難しいとも受け取れます。

畑野  ビットマイルの流通によって、当社が大きく儲けようとは考えていません。では、何で儲けるのか。それは「ビッグデータ」です。仮想通貨を無償で付与して、(会員の)詳細な情報を収集する。もちろん、ブロックチェーンに紐づけて情報が絶対に漏れないようにする。それぞれ集めた情報をビッグデータとして流通させる。これが真の目的です。取引先にとって情報は貴重ですし、会員は当社のプラットフォームを使えば仮想通貨がもらえて商品を購入したりサービスを受けたりできる。当社は、ビッグデータで新しいビジネスが創造できる可能性が出てくる。三者にメリットのある仕組みがトークンエコノミーということです。

――会員数が290万人いるとのことですが、その会員に説明はしたのですか。

畑野  サービスを開始したわけではありませんので、「このようなメリットがあります!」とアピールするのは、まだ時期尚早です。きちんと説明できるタイミングがきましたら、大々的に発表しますよ。

――ところで、1月末の発表から3か月が経過しようとしていますが、これまで取り組んできたことは?

畑野  当社が何をしたいのかを説明するため、取引先や仮想通貨取引所などを回っていました。金融庁にも訪問しましたよ。また、サービス開始に向けて、改めてセキュリティ強化や仕組みの改善など、再度のシステム構築にも取り組んでいます。システム面では、とくに設計が重要です。仕組みやセキュリティを間違えると、(流出事件など)取り返しのつかない事態になってしまいますからね。

――仮想通貨取引所とも連携するのですか。

畑野  すでに、ビットフライヤーさんとポイントサービスで連携しています。ほかの取引所とも連携したいですね。

――10月をめどにサービスを開始して、当面の目標は?

畑野 まずは会員増ですね。初年度に400万人、3年後に600万人強を目指します。そして、情報がビッグデータ化して有効活用できる段階になった時、大きなビジネスが生まれると確信しています。