三代目市川猿之助(現猿翁)が1986年に始めたスペクタクルな現代風歌舞伎・スーパー歌舞伎。その精神を継承した四代目猿之助が、さらなる進化形“スーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)”を立ち上げ、3・4月に『空ヲ刻ム者~若き仏師の物語~』を上演する。脚本は、歌舞伎初挑戦となる若手劇作家・前川知大(イキウメ)に新作を依頼。キャストも澤瀉屋の面々に加え、佐々木蔵之介、浅野和之、福士誠治といった現代劇の俳優を多く招いた。新たな挑戦に燃えるふたり、市川猿之助と佐々木蔵之介に話を聞いた。
スーパー歌舞伎Ⅱ『空ヲ刻ム者~若き仏師の物語~』チケット情報
両者の出会いは、2007年の大河ドラマ『風林火山』。その縁で、佐々木を通じて前川という才能を知った猿之助は、自ら直訴して前川作・演出、佐々木主演の舞台『狭き門よりは入れ』(2009年)に出演した。「そのとき、『今回僕が現代劇に出たんで、次は兄さん(=蔵之介)が歌舞伎に出てください』と言われたんです。何を言うてんねんと思いながら『ハイハイ』と流していたら、ほんとにこんなことに(笑)。でも出たいと思って出られるものじゃないし、感謝しかありません。猿之助さんは人との出会いをすごく大切にする方ですね」(佐々木)。
「でも、闇雲に白羽の矢を立てたわけではないですよ(笑)。それに、歌舞伎役者そのものになってもらおうというのではない。僕らも刺激を受けて足りないものを補い合いたいから、兄さんたちは普通に、自然の居方でいいんです」(猿之助)。「そう言われても、そうするしかない(苦笑)。ただ自分にとっても46歳にして大きな挑戦ではあるんですが、スーパー歌舞伎Ⅱというものが成功するための一助にでもなれば、というのが本心。こんな素材を使っていただけるなら、喜んで何かさせていただきます!」(佐々木)。
猿之助は才能豊かな若き仏師・十和、佐々木はその幼なじみの官吏・一馬を演じる。スーパー歌舞伎から引き継ぐ見せ場の宙乗りはなんと、猿之助&蔵之介の二人宙乗り!「女方さんを抱えながら行く男女の宙乗りはやったことがあるんですけど、男同士で抱えるのもおかしいから(笑)、どんな宙乗りにしようか今考えているところ。せっかくだから、兄さんには女方さんとの恋愛のシーンも経験していただこうと」(猿之助)。「稽古場ではメイクもしてない状態で、(市川)笑也さんとナニをしたり?するんですよね(笑)。男と女の気持ちになるワケだから、これこそ本当の“芝居”。未知の領域で(笑)、役者としてすごく面白い体験ができそうです」(佐々木)
「歌舞伎というものは、ゆくゆくはあらゆる垣根を越えなければいけない。演じる側にも垣根がない、それこそが私の目指す歌舞伎」と猿之助。その第一歩を、異ジャンルの心強い同志たちと踏み出す。
公演は3月5日(水)から29日(土)まで東京・新橋演舞場、4月5日(土)から20日(土)まで大阪松竹座にて。東京公演のチケットは発売中、大阪公演の一般発売は2月19日(土)午前10時より。
取材・文:武田吏都