創業20周年を迎えたエコリカの宗廣宗三社長に、リサイクルインクの取り組みを聞いた

2003年7月に創業したエコリカが、20周年を迎えた。今ではリサイクルインクの販売シェアトップベンダーとなり、SDGsやサステナビリティに対する消費者意識の高まりも後押しし、エコリカのビジネスモデルは時流にマッチしている。だが、それまで国内になかったリサイクルインク事業を立ち上げてから今日に至るまで、いくつもの困難を乗り越えてきた。闘う経営者・宗廣宗三社長にエコリカのこれまでを聞いた。

米国で視察したリサイクルインクを国内で展開

年の瀬が近づき、年賀状を作成するプリンタを使うために新しいインクを購入するシーズンになった。エコリカは、リサイクルインクのトップベンダーである。家電量販店の店頭に設置してあるグリーンの回収ボックスといえば、すぐにエコリカがイメージされるだろう。

宗廣宗三社長がエコリカを創業したのは2003年7月だが、それまではマウスやキーボードなどのPC周辺機器メーカーであるロジクールの代理店として約20年間、エムエスシーという卸売企業を経営していた。エコリカは、エムエスシーを含む数社による共同事業目的会社として誕生し、リサイクルインクやリサイクルトナーの取り扱いを開始した。

そもそも宗廣社長がリサイクルインク事業を始めたきっかけは、年間約110万台を販売してロジークールのトップクラスの代理店だったエムエスシーが、毎年米国で開催するパートナーカンファレンスに招かれたときのこと。米国のチェーンストアを視察した際に、米ヒューレット・パッカードのリサイクルインクを見たのがきっかけだった。「これならいける」と宗廣社長は思ったという。

大手メーカーの特許の壁で「互換インク」は困難に

国内では当時、家庭用プリンタの印刷方式がインクリボンからインクジェットに急速に変わっていた。プリンタメーカーの純正インクカートリッジの特許に抵触しない、独自の「互換インクカートリッジ」をつくるメーカーはあったが、市場規模は小さかった。宗廣社長も互換インクを、とあるメーカーから仕入れて販売していたが、「数々の特許をかいくぐって一定の品質を保ちながら互換インクを販売しつづけるのは困難」と考えていた。

というのも「大手メーカーは、“ヘッドにインクを供給するシステム”など、とても広範囲に解釈できるような特許の取得方法だった」と振り返るように、特許の壁が高かったからだ。特許の数も膨大で、1個のカートリッジに対し、弁の形状や内部に空気を取り入れる口など約30もの特許がかけられていた。

米国で視察したリサイクルインクなら、純正のインクカートリッジを回収してインクを充填して販売するスキームだから、品質もユーザーの使い勝手も変わらず、何よりもインクカートリッジを使い捨てにしないので環境にやさしい。さっそくエコリカを設立し、リサイクルインク事業の立ち上げにとりかかった。

ただ、話はそんなに単純ではなかった。業務用ならまだしも、家庭用プリンタの純正インクの価格は1000円前後。純正インクよりも安いリサイクルインクをつくるには、大量にカートリッジを回収する仕組みをつくらなければ、ビジネスとして成り立たなかった。その上、リサイクルインクの製造拠点を新規で設立するのも難しい。

そこで宗廣社長は「互換インクの製造ラインをそのまま使う」という方法を考えた。カートリッジがリサイクル品なら、製造やインクのラインも使えるはずだと。いわば製造拠点のリサイクル化だ。回収した純正のカートリッジに、純正に近いインクを注入することでビジネスが成り立つと踏んだ。

また大量に回収する仕組みは、自前のインクカートリッジ専用回収ボックスを家電量販店の店頭に設置することで解決できる。大手家電量販店に製品を仕入れてもらい、一般ユーザーに販売するには、ノーブランドではなく、しっかりとブランドをつくって認知していく必要があった。そこで「エコリカ」のブランド認知のための販促費も相当に注ぎ込んだ。

従来は廃棄が当たり前だった使用済みインクカートリッジを回収・再製品化するという循環型ビジネスモデルを、国内で初めてエコリカが構築したことは特筆されるだろう。

リサイクル機運の高まりが追い風に

エコリカにとって幸運だったのは、創業して3カ月後の03年10月に「PCリサイクル法」が施行されたことだ。家庭用PCのリサイクル機運が一気に高まり、リサイクルインクに追い風が吹いた。

結果的に、互換インクの市場規模は小さく、ほぼ純正インクが市場を独占していた中、新たに登場したエコリカのリサイクルインクは、価格が純正より2~3割安くて注目を浴び、飛ぶように売れたのだった。

こうして今日に至るまで築かれたエコリカの循環型ビジネスモデルの社会的な貢献は、数々の環境関連の受賞歴をみても明らかである。

2009年の地球環境大賞「フジサンケイ ビジネスアイ賞」からはじまり、10年の「エコマークアワード2010」の「銀賞」、19年のグリーン購入大賞「大賞」、21年のエコプロアワード「奨励賞」、同年のおおさか環境賞「大賞」、22年のeco検定アワード「エコユニット部門 優秀賞」、22年の環境大臣表彰「地域環境保全功労者表彰」、23年の地球環境大賞 「東京商工会議所会頭賞」――。エコリカのリサイクルインクの取り組みは、社会から評価されている。

なお、直近では23年7月25日、ヤマダホールディングスが、エコリカによる使用済みインクカートリッジの回収プログラムとリサイクルインクカートリッジ販売までの一連の仕組みを、環境貢献への取り組みとして「YAMADA GREEN」に認定している。

ちなみに、環境省がライフサイクル全体を考慮して環境保全に資する商品を認定して表示する制度「エコマーク」で、「再生インクカートリッジ」の品質基準の基準認定第1号はエコリカである。

なぜ製品パッケージが透明なのか

カートリッジだけではなく細かい点でも環境に配慮している。一例を挙げれば、製品パッケージの透明な袋そのものが、リサイクルをする際のツールになっている。

使用済みのカートリッジをそのままカバンの中に入れるとインクが漏れたりする。ユーザーは嫌がりカートリッジの回収率は下がる。そこで、ジッパー付きの製品パッケージにして、袋そのものを回収時にも使えるようにしているのだ。パッケージそのものを簡素化し、できるだけごみを出さないというエコマークの品質基準もクリアしている。

袋が透明なのは購入する際に中身を見えるようにし、リサイクルインクであることを理解した上で購入してもらうための工夫である。袋の素材も「ガスバリア袋」を使用。袋の中にオゾンが入るとインクは劣化してしまうため、気密性や品質、耐久性の高い三層構造の袋を採用している。

「原価を考えれば箱のパッケージの方がはるかに安いが、透明袋そのものがエコリカの取り組みを象徴している」と宗廣社長は語る。

インクカートリッジを「使い捨てしない」社会に

環境省のエコマーク基準をクリアしていることは、取引先の拡大にもつながっている。近年では販売店も、環境負荷の低い商品を調達し、消費者に販売するという意識が高まっているからだ。

消費者も、SDGsやサステナビリティなど環境への取り組みを購入時の判断基準にするケースが増えている。メーカーなど多くの企業も、自社の環境への取り組みを積極的にアピールしている。そうした中、少なくともインクカートリッジの使い捨ては、こうした社会的な取り組みに逆行するため、今後ますます減っていくだろう。

23年2月にエコリカのリサイクルカートリッジの累計販売数量は1億個を超えた。製品1個につき1円をWWFに寄付しているのでその金額は1億円となった。ただ、製品6個入りでも、1個入りでも1円の換算なので、累計カートリッジ数に換算すると約2億4000万個となる。

03~21年3月までに累計回収したカートリッジ数は約4億個。そのうち約50%、約2億個のカートリッジを再利用している。年賀状で家庭用プリンタがもっとも稼働する年末シーズン。20周年を迎えたエコリカのリサイクルインクの取り組みは、今後ますます注目されるだろう。(BCN・細田 立圭志)

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