作れるものなら作るよ「食句」
入りづらい居酒屋。見過ごしているようで街ごとにいくつか存在している謎の店。
東神奈川キニナル酒場もう1軒は、そんな〝入りづらい”風情の「食句」。
JR東神奈川駅西口を出て大通りから入り、閑散とした路地を歩いていると、入りづらいキニナル店へ辿り着いた。
渋い佇まいだ。「あやしくて」入りづらいというよりは、「メニューと値段がわからず中の様子も見えない」という点で入りづらい、という感じはする。どこか良さげな雰囲気も感じてくる。看板の酒・魚・宴というのもめずらしいが悪くない。
店内へ。そぞろと取材の旨を店の方に話すと「そうですか……いいですよ、どうぞ……」と静かな口調で取材に応じてくださった。
とても静かな店内。その中でまず目についたのがカウンター席前に並ぶ大皿料理。
魚を中心とした料理に、できたてのキス天ぷらと夏野菜の卵とじも加わる。
とても、美味しそうな面々。
カウンターの上に目をやると、お品書きがあった。
値段の表記は無い。イカさしやイカ塩辛のイカは絵で表現してあった。
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「取材ね……暑いだろうしビール1本、サービスで出すよ」とさりげなく瓶ビールを出していただいた。
続いて「お通し食べてみて」とサッと料理が出てくる。小鯵の唐揚げと枝豆だ。すべてさりげなく、そっと、提供してくれた。
店名の「食句」は「しょっく」と読む。切り盛りするのは女将の伊勢文江さん。この場所で12年、その前は東神奈川の東口側で15年と計27年間、東神奈川で食句を営んでいるとのこと。店名の由来は「わからない」のだそう。
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食句に訪れるお客さんはご近所の常連客のみ、と言っていいようで、一見さんはほぼ来ないという。
「入りづらい」というキニナル投稿の話をすると「来ていただくお客さんは、もちろん歓迎しますが……中も見えない小さな店なので、わざわざ入る人は確かにいませんね……拒んでるわけでもないですが、歓迎ムードを出す店でもないのでね……」とのこと。
すべて独学で料理を学んだ、という女将さんのお薦め料理を出していただいた。
中トロのようなマグロ刺に、サバの照り焼き。
見た目のとおり中トロのような脂がのったマグロ刺は贅沢な味わい。サバの照り焼きはやさしい甘さで身もやわらかく、うまい。ながらも、値段が少々気になってきたので聞いてみた。
大ぶり8切れで中トロのような味わいのマグロ刺は400円で、絶妙な味付けのサバの照り焼きは350円という安さ。料理はすべて300~500円というやさしい料金設定。
「居酒屋ですから、こういう値段なんです」と多くを語らない女将さんの風情に懐を感じる。
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もう一品、何か頼もうとお品書きを見ていると、隣の常連さんから「品書きに無くても食べたいもんを言えば、作れるもんなら作ってくれるんだよ、ここは」とのお言葉。
どこかで聞いたことがある言葉。お品書きにない食べたいものを頼めるか、女将さんにその旨を尋ねてみると「作れるものは作るよ」との返答。昔から変わらず、ずっとやっているという。
好物の品を頼んでみた。女将さんは小さくうなずき調理をはじめ、しばらくして注文した料理が運ばれてきた。
お品書きにない焼きそば(500円)。
「居酒屋だからね、ウチの店は。ほかは知らないけどそういうもんだと思ってるから」と言い、自家製の紅ショウガも出してくれた。
女将さん、ごちそうさまでした。
取材を終えて
32歳から自分のこれからの人生を考え、やりたいことをやると決意し、経営から店づくりまでをすべて自分ひとりでやった、という係長の元係長。
20年間一緒に店を切り盛りしていた旦那さんが7年前に他界し、続けるかどうか考えてみたが続けることにした食句の女将さん。
東神奈川で、一人店を守る2軒の酒場。心意気と心遣い、そのふたつが地元の方々の憩いの場を守っていた。
係長
住所/横浜市神奈川区西神奈川1丁目5-2
電話番号/045-321-1125
定休日/日曜日
営業時間/11:30~14:30、17:30~24:00
食句
住所/横浜市神奈川区二ツ谷町2-4
電話番号/045-323-2660
定休日/不定休
営業時間/18:00~
※本記事は2013年8月の「はまれぽ」記事を再掲載したものです。
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