シリーズ累計発行部数1億2千万部を誇る荒木飛呂彦原作の大人気コミックシリーズ「ジョジョの奇妙な冒険」が初めて舞台化される。今回、描かれるのは物語の始まりとなる第1部「ファントムブラッド」。19世紀末のイギリスを舞台に、主人公ジョナサン・ジョースター(通称“ジョジョ”)と運命的な出会いを果たすディオ・ブランドーを中心に〈謎の石仮面〉をめぐる熱き戦いと奇妙な因縁を描いた壮大な物語を展開する。“ジョジョ”をダブルキャストで演じる松下優也と有澤樟太郎に公演への意気込みを聞いた。
ー世界的に大ヒットを記録している漫画の初舞台化です。最初に公演への意気込みを聞かせてください。
松下 初めてのことが多い作品ですが、僕は前例のないものが昔から大好きなんですよ。今回は大好きな「初」というワードがたくさん入っていますから、やる気しかないです。
有澤 待望の舞台化ですし、原作を知らない人はいないというくらいの超名作なので、楽しみな気持ちがとても大きいです。
ーお二人が演じる“ジョジョ”はどのような人物だと考えていますか。
松下 ジョナサン・ジョースターを演じることが決まってから、原作を何度も読んでいますが、見れば見るほどジョナサンは愛おしいし、突き抜けていてかっこいい。どんどん好きになっています。今回、舞台化することであの原作やアニメをどうやって表現するのかは、僕たちもまだ分からないところが多いのですが、演出面もぜひ楽しみにしていただけたらと思います。(長谷川)寧さんが演出・振り付けを担当されるので、ただのアクションではないと思います。肉弾戦で、1対1で戦うということではない。“波紋”をどう表現するのか、きっと想像を超えてくるだろうと思うので期待しています。僕たちが指を少し動かしただけで、すごいことになるのかもしれないなと楽しみです。
ー肉弾戦ではないとすると、有澤さんが出演していた舞台「キングダム」ともまた違った作品になりそうですね。
有澤 そうですね。ジョナサンは、突き抜けた正義感やまっすぐさ、人間らしさがある人物です。「ファントムブラット」は人間らしさをフィーチャーした物語だと思うので、そういう意味で、帝劇での上演にも世界観が合うと思います。演出の(長谷川)寧さんは、「死刑執行中脱獄進行中」でも(本作の原作者である)荒木先生の作品の演出をされていると聞きましたので、すごく信頼感があります。クリエーターの方々も本当に深い“ジョジョ愛”を持って挑んでいるので、その愛の中で演じたいと思っています。
ーイギリスを舞台にしているということもあり、“ジョジョ”は、紳士的な面もあるキャラクターですが、そうした紳士的な立居振る舞いも大切になるのでは?
松下 ミュージカルは1800年代後半を舞台にした作品が多いんです。なので、僕も何度かそうした作品に出演していて、紳士でいるという世界にも慣れてはいます。ジャック・ザ・リッパーに出くわすのは今回が3回目ですから(笑)。そうした作品に出演してきたという意味では、世界観としてはそれほどやりづらさは感じていないですね。ただ、(“ジョジョ”は)突き抜けているという点では尋常じゃない部分があると思うので、そこをどう表現していくのかは、自分でも未知なところはあります。表面的に紳士でいればいいわけではないと思うので、これから作り上げていきたいと思っています。
有澤 松下さんもそうですが、お父さんのジョースター卿の別所さんは、その年代の作品をたくさん演じられてきた方なので、紳士的な所作などをお二人から学んでいきたいと思っています。ただ、ジョナサンは内面をいかに出していけるかが重要だと思うので、台本としっかり向き合って、原作ファンの方も初めて見る方も絶対に楽しめる作品にしたいと思います。あのせりふが歌になるんだとか、いろいろな見方ができると思いますので、楽しみにしていただけたらと思います。
ー今作は、帝国劇場から公演がスタートします。松下さんは今回、初めての帝劇出演で、座長になります。それについてはどんなお気持ちですか。
松下 ワクワクしています。ついに来たかという感じです。もちろん、観客として何回も観に行かせていただいている劇場ですが、ステージ上からどんな景色が見えるのかすごく楽しみです。ただ、あまりそればかり考え過ぎないようにもしています。帝国劇場は長い歴史がある素晴らしい劇場ですが、僕たちはそれがどんな劇場であれやることは変わらないので、いつも通り、変に気張り過ぎずに立てたらいいなと思います。
ー有澤さんは舞台「キングダム」で年代の近い、仲が良い俳優が座長として立っている姿を間近で見てきたと思いますが、改めて今、自分が座長になるということに対してはどんな気持ちですか。
有澤 「キングダム」で立たせていただいて、帝国劇場はやっぱり特別な劇場なんだと感じましたし、座長としてそこに立てるのはすごいことだと思いました。カーテンコールであいさつをしている座長を見た時に、僕たちとは少し違う世界が見えているんじゃないかなと思ったので、その景色がどんなものなのかすごく楽しみです。それに、2025年に建替え工事に入ってしまうので、その前に立たせていただけるというのは本当に光栄だと思っています。両親にも見に来てほしいと思っています。
ーお二人が思う“ジョジョ”の魅力、それから自分と“ジョジョ”が似ているところは?
松下 似ているところは、正義感に溢れていて、ピュアで真面目で…似てないところを探す方が大変です(笑)。
有澤 僕も正義感があって、突き抜けているところかな。文面にしたらちょっと恥ずかしくなりますが(笑)。
松下 でも、お互い、それで選ばれているよね(笑)。
有澤 そうですね、真面目そうなやつだって(笑)。
ーでは、お互いの印象を教えてください。
松下 最初の印象は「デカイ人だな」って(笑)。僕もそれなりに身長はありますが、やっぱりでかい(笑)。あとは、爽やか。僕が(現在の有澤と同じ)28歳の頃は、人を信じていない目をしていた気がする(笑)。でも、(有澤は)すごく爽やかだし、まさにジョナサンだなって。
有澤 同じ兵庫出身なのですが、東京に出て来るときに、自分の出身地の役者さんを調べたことがあるんですよ。それで松下さんを知って、いつかご一緒できたらと思っていました。ずっとご一緒できることを楽しみにしていたのでうれしくて、すぐにインスタをフォローしちゃいました(笑)。ご本人を前にしていうのもなんですが、すごくカリスマ性があって真ん中が似合う方。(松下は「花より男子 The Musical」で)道明寺司を演じていたことがあったのですが、道明寺を現実に演じられる人がいるんだと印象に残っているので、そのイメージが強いです。
松下 僕、カリスマ性しかないんで(笑)。
有澤 そんなことを言っても全然、鼻につかないでしょう(笑)? すごく華がある方ですね。
ー改めて、舞台版ならではの面白さや魅力を教えてください。
松下 僕はこのお話を聞いた時に、「これを舞台化するのにどう表現するんだろう」と思いました。正直、無理じゃないかと思っていたのですが、台本を読むと原作の世界観が余すことなく表現されています。すごいことだと思うと同時に、演じるのはすごく大変そうだなと(苦笑)。今回はミュージカルなので、どんな楽曲になるのか、楽曲面も楽しみです。ぜひ、音楽も含めて楽しみにしていただければと思います。
有澤 この作品のクリエーターの方たちは、普段は舞台や演劇とは違う業界で活躍されている方も多いんですよ。(舞台衣裳の専門のスタッフではなく)ファッションデザイナーの方だったり、さまざまな職業の方がいて、異種格闘技戦のような面白さがあります。キャストもさまざまなジャンルの方が集まっていますし、総合芸術として楽しんでいただけると思います。
(取材・文・写真:嶋田真己)
ミュージカル「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」は、2024年2月6日~28日に都内・帝国劇場ほか、札幌、兵庫で上演。