――劇場版はそんな羅門と彼のかつての教え子・剛太が考え方やスタンスを逆転させて激突するところが大きなポイントですが、遠藤さんはそんなふたりがガチで戦うクライマックスのシーンから撮影に入られたみたいですね。

「そうなんです。いちばん最初がハートをぶつけ合うあの極限のバトル・シーンからだったんですよね。むちゃくちゃ暑かったから、汗だくになりましたよ(笑)。でも、いま思うと、いっぱい雑談をして、藤ヶ谷くんってこういう人なんだって分かる前にあのシーンに入ったから、逆にピリッと締まったものになってよかったなと思いますね」

――藤ヶ谷さんには現場で何か伝えましたか?

「あまり言ってないですね。ただ、“芝居は自分ひとりでやるものじゃないし、相手の出してきたものを拾って返していくものだから、自分が感じたものを思い切って出してきな”っていうことは言ったと思います。

相手が遠慮しているなって感じたときは特にそういうことを言うんですけど、藤ヶ谷くんは最初からそこは分かっていて、思いっきりぶつけてきたので、気持ちの交流ができたと思います」 

 ――実際に芝居をしてみていかがでしたか?

「熱い芝居でしたよ。やっぱり相手の目や芝居を見ていると伝わってくるものがあるんですよね。それが閉じていたり、なかなか出せない人もいるけど、藤ヶ谷くんは感じたものがすべて出てくる人なので、こちらもそれを拾いながらぶつけていきましたよ」

――仮面をつけているときのアクション・シーンとは違って、あのシーンは観る側のハートにもズンズン響いてくるものがありますね。

「仮面を取った後の俺たちの殴り合いは、アクションというよりも、感情表現が“殴る”という行為になったものだからね。仮面をつけているときのアクションは心というより動きの躍動感を楽しんでもらえると思いますが、脱いだときのハートのアクションはそれとはまた違う。やっているときも感情で動くことが多かったかな」

――藤ヶ谷さんは演じていて、自然に涙がこぼれたと言ってました。

「そういうものを拾える力があるからだと思いますね」

――藤ヶ谷さんに対してはどんな印象を持たれましたか?

「普段はざっくばらん過ぎますよね(笑)。こっちが聞いてないことも色々話してくれるから面白かったですよ。だいたい、初対面の若い人たちは俺のことを怖がっちゃって、なかなか向こうから近寄ってくることはないんだけど、藤ヶ谷くんは撮影中も“遠藤さん、一緒にメシ食いましょう”って誘ってくれて。離れ気味のほかの若い子たちにも“みんなで一緒に食うんだよ”って声をかけていましたね」

――彼の魅力はどんなところにあると思いますか?

「声がいいかな。普段はすごく早口なんだけど、セリフを通して聞くと声の太さみたいなのがあって、俺はすごい好きだな。

それと、やっぱり目だよね。眼力が強いというのもあるけど、色っぽい目をしてるじゃない? 一見、冷たい感じがするんだけど、だから藤ヶ谷くんが笑うとファンの子たちはみんな喜ぶんだよ(笑)。完成披露上映会イベントのときに、ファンのみんながキャーキャー言っているから何かな? と思ったんだけど、そういうことだったんだよね。俺も藤ヶ谷くんに対してはクールなイメージはないね。ものすごく、ざっくばらんな人っていう印象の方が強いですよ」