歌舞伎俳優の坂田藤十郎が3月10日に会見を開き、歌舞伎座新開場一周年記念「鳳凰祭四月大歌舞伎」昼の部で『曽根崎心中』のお初役を“一世一代”で勤めると発表した。
会見では「初めてお初を演じた時のことを思い出していました。本当に嬉しい」と何度も口にした藤十郎。江戸時代に初演された『曽根崎心中』は長らく再演されずにいたが、1953年、宇野信夫の脚色で復活。このとき藤十郎の父・二代目中村鴈治郎の徳兵衛、二代目中村扇雀(現藤十郎)のお初で上演され、大当たりをとった。それから現在に至るまで、藤十郎はお初を演じ続け、初役以来実に1300回以上を数える。
「新橋演舞場でお初を初めて演ってから気持ちはずっと変わりません。(お初を演じることは)一心同体とも違うのですが、無意識のうちにお初として意識しているような、不思議な感覚。こういう気持ちに自分がなれることがありがたい」
遊女・お初と醤油屋の手代・徳兵衛は恋人同士。ところが徳兵衛が信頼していた友人の裏切りにあい金を騙しとられたことから、ふたりは身の潔白を証明するため心中を決意する。
お初の魅力については「愛の強さ」ときっぱり。19歳という若い命を散らすことになるのだが「最後の最後にまた次の人生が始まる、そういう顔なんですね。私はそう思って演じています」と話す。
“一世一代”ということでもうお初はやらないのか?と質問が飛ぶと「お初に見切りをつけるようなことはいたしません。観てくださるお客様がそう(一世一代の芸と)思ってくださるようなお芝居になればいい」と答え、「(3月に歌舞伎座で上演中の)『封印切』の忠兵衛もそうだし、どんな役でもこれが最後だという気持ちでいることは間違いない」と語った。
「鳳凰祭四月大歌舞伎」は東京・歌舞伎座にて4月2日(水)から26日(土)まで上演。チケットは一部を除き発売中。