企業の52.6%が正社員の人手不足を実感、帝国データバンクの調査で明らかに

帝国データバンクは2月26日に、全国の企業を対象に実施した人手不足の状況に関する調査の結果を発表した。同調査は、1月18~31日の期間に全国2万7308社に対して行われ、1万1431社から有効回答を得ている。

トップはITエンジニア不足の「情報サービス」で77.0%

調査結果によれば、全業種において正社員が「不足」と感じている企業は、前年同月と比較して0.9ポイント増の52.6%に達し、これまでもっとも高かった2019年(53.0%)に次ぐ高い水準となった。また、非正社員では前年同月と比較して1.1ポイント減の29.9%だったが、引き続き約3割の水準で推移している。

業種別でみると、おもにIT企業を指す「情報サービス」(77.0%)の人手不足感がもっとも高く、過去最高を更新した。企業からは、「企業のシステム刷新のプロジェクトが相次いで発生し、人手不足の状態が続いている」「企業の設備投資意欲が高く、人手が足りていない状況が継続している」「システム開発の案件が増えてきているが、人材不足で対応できず受注に結びつけることができない」といった声が多く寄せられ、人手不足がボトルネックとなっている現状がうかがえる。

また、「建設」(69.2%)や、インバンド需要が活況な「旅館・ホテル」(68.6%)など8業種における人手不足感が、6割台に達している。

「2024年問題」のおもな対象である、「建設業」「物流業」「医療業」の3業種における人手不足の現状をみると、正社員は「物流業」(道路貨物運送業)では72.0%、「医療業」では71.0%、「建設業」では69.2%が人手不足を感じていると回答した。

非正社員における人手不足の割合を業種別でみると、「飲食店」(72.2%)は前年同月から8.2ポイント減も引き続き1位となっている。2位の「人材派遣・紹介」(62.0%)では人手不足の高まりによる需要増で、派遣人材の不足が目立つ。以下、正社員の人手不足感でも上位にランクインした「旅館・ホテル」(59.6%)をはじめ、小売・サービス業を中心に個人向け業種が上位となっている。

正社員の賃上げ実施見込みを尋ねたところ、人手不足を感じている企業では65.9%と、「適正」(55.7%)、「過剰」(51.6%)を大きく上回った。一方で、企業からは「労働力不足は顕著であり、賃金を上げないと人員の確保は厳しい」「賃金を上げたいが、材料値上げ分の価格転嫁もできないうえに人件費分の価格転嫁を認めてくれない取引先があり、なかなか難しい」「大手を中心にベースアップが相次いでいるが、中小企業には逆風」といった、賃上げ実施の難しさを訴える声が多く寄せられた。