そこから始まり、役者をしながらどんどん強くなったある確信が、斎藤工を彼自身が夢みる“未来”の映画の製作に駆り立てているのかもしれない。
「僕は映画は総合芸術だと思っているし、チャップリンが『独裁者』(’40)を命がけで作ったように、映画には多くの人々の心を動かす強い力がある。
僕は映画でそういうことを学んできたから、未来の子供たちに向けてそういう映画を作りたい。
それこそ、去年の大河ドラマ『八重の桜』には西島秀俊さんやオダギリジョーさん、長谷川博己さん、村上淳さんといった同じような想いのシネフィルがたくさん集まっていて(笑)。
居酒屋で呑んで話して生まれたような“何かやろうぜ!”というエネルギーをそのまま映画にする作業をしていきたいんです」
「それをすでにやっているのが、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭なんですよ」と話が一巡した。
「ここで出会ったクリエイターたちが一緒に作品を作る。そのルーティンこそが僕は映画祭特有のことだと思っているし、人と人との出会いから生まれることはやっぱり強いんですよ。そういう流れを僕は作っていきたい。海外のように役者主導の映画がもっとあっていいと思うし、僕も自発的にそれを実現させるための懸け橋になっていけたらいいなと思っています」
夕張市の財政破綻で一時は存続が危ぶまれたものの、見事な復活を遂げ、いまでは若い映画監督の育成、誕生させる場として往時以上の活気に湧く「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」。
そして、その息吹きに触れて、自らの考えを確かなものにした斎藤工。その出会いは運命的なものだったのかもしれない。そのことは数年後の“未来”が証明してくれるはずだ。
<オフシアター・コンペティション部門>
●グランプリ
『さまよう小指』
桃子は5歳から片思いをしている涼介のクローンを作り、同棲を始める。ところが涼介本人にクローンの存在がバレてしまい……。
●審査員特別賞
『女体銃 ガン・ウーマン』
身体に銃を埋め込んだ暗殺者“女体銃”が繰り広げる、血と復讐のエクストリーム・アクション。壮絶なヒロインを『片腕マシンガール』の亜紗美が怪演!
●北海道知事賞
『リュウグウノツカイ』
|不漁が続く小さな漁師町に巨大な深海魚が打ち上がり、少女たちは集団妊娠を計画する。アメリカで実際に起きた女子高生集団妊娠騒動を題材にした青春映画。