千円でべろべーろになれるせんべろ酒場。
近頃はめっきり、JR中央線にハマっている。
ガード下に飲み屋横丁に路地裏に。
歩けば歩くほどにせんべろの魔境が生息していて飽きることがない。

阿佐ヶ谷といえばスター通り商店街がアツい。
新旧入り乱れた酒場が並び、駅から近いこともあって「その先」へ行くという発想はこれまでほとんどなかった。
「駅からちょい歩くけど、おっちゃん(店主)が面白い串焼き屋があるんだよ」
と言うのは飲み仲間のチヒロだ。
駅から商店街を抜けて10分ほど歩き、住宅地にさしかかるあたりに、その「川名」はあった。
表に焼き場があり、『汁のもれない袋でお持ち帰り出来ます』との張り紙がある。
なかなか主婦のツボを押さえた文言である。
店に入ったのは夕方六時半。

すでに店には地元のおじさんちが半分出来上がった様子で愉快に声を上げている。
我々が席に着くと、おかみさんが「どうぞ」と出すお通しを思わず二度見してしまった。
カットしたみかんにちょっと高そうなクッキーが二皿…。
まるで上品なお友達んちに招かれたときの三時のおやつではないか。
さすがは「焼鳥割烹」と謳うだけのことはある。
お料理はいなだのお刺身が366円、お酒はほとんどが399円。
串は100円前後で一本から焼いてくれる。
ビールはもちろんだがホッピーのジョッキまでもがきんきんに冷えて出てきたことに我々はちょっとテンションが上がる。

で。ここは本来焼鳥屋なのだが、焼鳥よりもサイドメニューにも力を入れている。
なかでも注目したいのは、チヒロが名物だと言い張る「玉子焼きシリーズ」だ。
キムチ玉子焼にトマト玉子焼きにニラ玉子焼、そして玉子たくあん焼という、もはや味も形状も想像できない料理もある。(全部399円)
そしてBGMは演歌でもポップスでもなく、なぜかハワイアン。
ホッピーとお刺身を食べながらとりあえず近況報告をし合う。

私「忘年会、何個行った?」
チヒロ「一個かな」
私「同じく。忙しくてそれどこじゃないぞと身構えてたら、案外誘われなかった」
チヒロ「同じく」

こんな冴えない二人を盛り上げるべくトマト玉子焼が登場した。

   

 

 






 
まさかのピザスタイルである。
「こんなの二人で食べきれないよ」と言いながらも、このジャンクなのかヘルシーなのかわからない一皿をあっという間に食べてしまった。
正直旨い。止まらない。だまされたと思って食べてほしい。
さらにホッピーと角ハイボールを注文する。
ふいにチヒロの頭上にふしぎな短冊を発見。