最後にオアシス流したら、みんなひとつになっちゃう(笑)

――たとえば今回のTOKIOのステージで、ゴリゴリの洋楽ファンが踊り出すかもしれない。それはジャンルの壁が壊れるという意味で、革命にはなり得ない?

マキタ:……それは、革命というより、発展的堕落じゃないですかね。

――はははははは。

マキタ:いや、それが悪いとは全然思わないんです。だって別に、そこまで理屈っぽく祭り事に関わりたい人はいないわけだから。やっぱり音楽って大衆のものじゃないですか。ロックカルチャーの理念とか、原理主義的な観点で見ればアティテュードはいかようにも語れますけど。でも結局、大きく言ってしまえば音楽って馬鹿になりたい人をちゃんと馬鹿にさせて踊らせてきた歴史ですから。そこは切っても切り離せない。

いくら先鋭的なものもいずれ大衆化して馴染んでいくし、そこに対するカウンターがまた興るっていう歴史が繰り返されていくんですよ。かつて『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』を興した現『MUSICA』の鹿野さんが、今年『VIVA LA ROCK』を興したのも、同じことだと思います。

――今注目されているのは、オーガナイザーの名前と思想が見えるものでしょうね。マキタさんは、かつて『歌舞伎町フェスティバル マキタ学級大文化祭』を主宰していましたが、今、自由にフェスをやっていいよ、と言われたら?

マキタ:……やらないですね。今はあんまりそこに興味がない。それよりも、V系のジャンルに入植していったのと同じように、既にあるフェスに入っていって、何か引っかき傷を残したいかな。

自由にフェスを作って、いくら自分なりの理念があったとしても、みんなが馬鹿になれる快感はもはや否定できないんですよ。どんなにいろんなことやったって、最後にオアシスの『ドント・ルック・バック・イン・アンガー』とか流したら、もうなんかみんな感動的な気持ちになってひとつになっちゃう(笑)。そこはもう仕方がない。

だから、最後にオアシスがあるのは仕方ないと腹を括って、それまでにどれだけ好き勝手なことをやれるか、何かひとつでも傷を残せるかを探すしかない。そういう時代だと思いますね。

――マキタさんは芸人としてトークもするし、演者としてフェスにも出ていく立場です。現在は対バン・ツアーをやられていますが、音楽を通してマキタさんが見せていくものとは?

マキタ:笑えて、踊れるものですね。基本的にお笑い芸人ってリミッターがあるんですよ。笑ってもらうのが先だから、自分は馬鹿になっちゃいけない。あとお客さんも笑いを求めていくと踊らなくなる。

でも、アーティストはそれが同時にできるんですよ。本当にカッコいいものを付き詰めて凄まじい熱狂を生み出すと同時に、笑わせることもできる。長渕剛さんとか矢沢さんなんか、そういう究極の存在ですよ。あそこまで気持ちよくなれて笑えたら最高ですよね。だから僕もそういうのを目指していきたい。笑いつつ、ノリつつ、踊れるっていう感じで。
 



『マキタスポーツのショービジネス』チケット発売中!

開催日:2014年6月14日(土)
会場:渋谷duo MUSIC EXCHENGE
開場/開演:17:00/18:00
LIVE:マキタスポーツ、石崎ひゅーい、(OPA:Fly or Die)

いしいえりこ。1977年・石川県生まれ。パンク/ロックを得意とするフリーの音楽ライター。フジロッカーズ。「音楽と人」や「SPA!」などに寄稿。ピザオブデスHP内でコラム『酒と泪と育児とロック』連載中。

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