東京・渋谷の大型複合文化施設Bunkamuraが今年で25周年を迎え、4月よりNPO法人シブヤ大学とのコラボレーション企画『オープン!ヴィレッジ』を実施している。Bunkamuraがプロデュースするオーチャードホール、シアターコクーン、ザ・ミュージアム、ル・シネマ、東急シアターオーブ、セルリアンタワー能楽堂の6つの施設を軸にした全6回のイベントで、各施設の担当プロデューサー等が講師となって施設の魅力や、そこから生まれる文化芸術の楽しさを授業形式で伝えていくものだ。5月には“2限目”となるシアターコクーンでの授業が開講され(1限目は4月、セルリアンタワー能楽堂にて開講)、募集定員約60名が出席。その約2時間の授業を覗いてみた。
全747席のシアターコクーンの1階席に集まった参加者たちは、ただちに“教室”が設けられているステージ上へと移動。頭上に多くの照明器具が吊られている中でまずは座学の授業がスタートした。講師陣(プロデューサー&演劇ライター)から劇場の基本設備やこれまでの上演形態について説明を受ける。スクリーンには“変化する劇場”“表現する舞台”“挑戦する作品”の3つのカテゴリーに分けられた過去の作品群が映し出され、観客参加型舞台(2013年『マクベス』)や大量の水を使った舞台(2005年『メディア』)などを詳しく紹介。多様な演出に対応してきた劇場のこれまでの歩みを振り返った。「劇場プロデューサーの仕事とは?」といった疑問に対する講師の答えを頷きながら聴き入る参加者の中には、事細かにメモを取る優等生も見られ、およそ1時間の座学はあっという間に終了した。
休み時間の後、劇場内に普段使われている開演ベルが響き渡って授業が再開。直前まで上演されていた舞台『殺風景』の舞台装置を設営した3日間の様子を、3分にまとめた映像がスクリーンに映し出される。作業スタッフ総勢190人が連日深夜まで動き回る様子を見た参加者からは感嘆の声が上がっていた。続いて劇場内を探索する実地授業がスタート。2階席の一番後ろから、またバルコニーの立ち見からのステージの眺めを体感し、いよいよ一般は立ち入り禁止の舞台裏へ。楽屋口には参加者一人ひとりの着到板(俳優、スタッフの劇場への入・退出を示すネームプレート)が用意されるなどの粋な計らいもあり、参加者の表情は一気に好奇心の笑顔満開に。さまざまな感想をつぶやきながら楽屋の各部屋を興味深く覗き、そしてステージ真下の“奈落”へ。オーケストラピットの位置からステージの高さまで舞台がせり上がっていく体験にも興奮の声が上がり、さながらテーマパークのアトラクションを味わっているかのよう。最後は俳優気分でカーテンコールを体験することに。入念なリハーサルを重ねて、いざ本番! ステージ上で照明を浴びた参加者たちは客席のBunkamuraスタッフによる熱烈な拍手&歓声に包まれながら堂々の挨拶をして、授業を終えた。
さまざまな文化芸術が生まれる現場を、普段では見られない角度から知ることができる貴重な機会。今後も計4回の授業が予定されている。
取材・文 上野紀子