「我が家は一人っ子で、長女を出産してから家庭を顧みない夫の様子やそれを当然にする義実家の状態に本当に腹が立ち、仮面夫婦になりました。
ワンオペで長女を育ててきた私は、時短勤務も園の行事なども全部一人で乗り切り、夫は本当にお金を稼いでくるだけの存在です。
娘のことは一応かわいがるけれどそれより仕事が優先の夫で、娘もそんな父親にそこまで懐く様子もなく、家ではふたりで過ごすのがほとんどですね。
友人には『離婚すれば?』と言われますが、しないのは娘のためで、シングルマザーになれば母子ふたりの寂しい生活になることを思えば、形だけでも両親揃っているほうがいいのではと考えています。
そんな夫が変わったのは、私と娘が事故に遭ってから。信号待ちをしている状態で追突され、私も娘も強い打撲で出血はなかったものの動けず、救急車で病院に運ばれました。
病院から連絡をもらった夫はさすがに大慌てでやってきて、ベッドに横たわる私たちを真っ青な顔で見つめていた姿は忘れられません。
そのとき、看護師さんから娘の血液型や普段の様子を尋ねられた夫は、答えることができませんでした。一緒に過ごさないのだから当たり前で、まともにコミュニケーションを取っていない家族であることを、私自身このとき初めて痛感しましたね……。
これを夫がどう受け止めたのか、2日の入院で戻ってきた私たちに、夫はよく声をかけるようになって。
仮面夫婦であることはとっくの昔に夫も気づいていたはずだけど、これまで聞くことのなかった『体調は大丈夫か?』『仕事が忙しいなら晩は俺が出前を取るから』など、私を気遣う言葉が出てきたことに驚いています。
離婚しなくてよかったかも、と思ったのは娘の授業参観に初めて夫が『俺も行く』と言い出したときで、親が揃って学校に来てくれることに娘は大喜びしていました。
仮面夫婦を耐えたのは正解だったとは今も思いませんが、それでも、今は夫の変化を少しずつ受け入れる努力を私もしています」(36歳/総務)
事故に遭ったこと自体は本当に災難であり、幼い子どもの体を考えれば胃が縮む思いがしますが、それがあったから夫が変わったのもまた事実です。
一家揃っている場で家族の状態をまともに答えられない自分について夫はどう感じたか、本当のことはわからないけれど、前向きな言葉が出るようになったのは受け入れたい変化ですよね。
これからは、少しずつでも愛情を取り戻せるふたりになれればと思います。