――何万通もリクエストがくるようになった経緯を教えて下さい。

原田:YouTubeが爆発的に広まったことで、海外のファンが日本の音楽をネットで知るというスタイルが08年くらいにはできあがっていたんですね。
そしてそのころにはNHKワールドもストリーミングで視聴できるようになって、番組に接触する手段が増えた。

それに僕たちは放送開始当初から徹底的な視聴者主義をとっていて、視聴者のリクエストに応えていったらみんなが面白がってリアクションをくれるようになって。

――ちなみにどこの国からの反響が多いのですか?

原田:放送当初はヨーロッパからが多かったですね。イギリスは2010年くらいはすごく多かった、最近はアメリカも増えています。アジアだったらフィリピンとインドネシアが多いですね。およそ140の国と地域で放送されているので、世界中から反響があります。
NHKワールドの中でも、番組単位でこれだけ反響がきているのは「J-MELO」だけなんです。

また、10年から東京藝術大学と、今年からは関西大学も加わって「どういう人が見てるのか」という調査をしています。社会学として面白いと、先生方も興味をお持ちのようで。客観的な数値やデータをインテリジェンス化することは、番組として意義を残せるかなと思っています。

――そういった調査結果もHP上で公開されていますね。

原田:そこを見ていただければお分かりになると思うんですが、圧倒的に10代~20代女性が多いんですよ。

08年に調査を始めた時は10代が多かったのに、今は20代が増えている。要は08年頃にYouTubeをきっかけにして、日本の音楽とファーストコンタクトを持った10代の人たちがそのまんま年齢が上がってることになるんですね。つまりそれ以降は技術革新というか、新たな接触の手段がないんじゃないかと、それは僕らにとっても課題ですね。
 

――なるほど。

原田:去年は視聴者から400以上のアーティストに対するリクエストが来ました。僕らが知らないアーティストを海外の視聴者が教えてくれることも多いです。
裾野は広いんですけど、人気アーティストの3大要素は調査を始めてからずっと変わらない。それは、L’Arc~en~CielやtheGazettEのようなロックバンド、ジャニーズなどの男性アイドル、ハロプロやAKB48のような女性アイドル。この括りからは離れているけどSCANDALも毎年上位ですね。

この並びでお気づきかもしれませんが、20世紀的なジャズや演歌、ロックやクラシックといった「音楽性によるカテゴリー」ではないのです。
海外で人気の「アイドル」「ヴィジュアル系」にせよ「アニソン」にせよ、それぞれは、音楽の特性を現してはおらず、音楽的には「何でもあり」なのです。
そもそも「J-POP」という言葉も「日本のポップス」という地場産業の総称ですしね。