「らしさって何?」現代的なテーマの物語を明るく描いた意欲作

 株式会社文藝春秋(本社:千代田区紀尾井町 社長:飯窪成幸)は、9月6日発売の『CREA』2024年秋号において、同誌で第3回となる「CREA夜ふかしマンガ大賞」を発表いたします。





 総合電子書籍ストア「ブックライブ」のデータによれば、マンガ作品の書籍購入が一番多い時間帯は22時以降、ピークは深夜0時。マンガは電子書籍で読むということがあたり前になりつつある今、仕事に子育てに忙しい大人世代の女性においても、夜の貴重なひとり時間にスマートフォンやタブレットでマンガに没頭するという現象が起きています。そこで眠りにつく前のひとときに、日中のあれこれを忘れさせ、新しい世界に連れ出してくれる力のある作品を称える「CREA夜ふかしマンガ大賞」が2022年秋に誕生し、今年第3回が開催されました。

 選考委員として、各界を代表するマンガ好き31名に参加いただきました。彩瀬まるさん(作家)、犬山紙子さん(イラストエッセイスト)、宇垣美里さん(フリーアナウンサー・俳優)、江上敬子さん(お笑い芸人・ニッチェ)、コナリミサトさん(マンガ家)、近藤くみこさん(お笑い芸人・ニッチェ)、佐久間宣行さん(テレビプロデューサー)、澤部渡さん(ミュージシャン)、新川帆立さん(小説家)、つづ井さん(マンガ家)、鶴谷香央理さん(マンガ家)、深緑野分さん(小説家)(以上50音順)をはじめ、ベテラン書店員やマンガ研究家、専門ライターの皆さんが参加。昨年からはじまった一般読者による投票を一次選考として、200作品以上が候補にあがるなか、2024年のナンバーワンが決定しました。

*2023年7月~24年6月に単行本の新刊が発売された(ただし、合計5巻以内)、もしくは、雑誌などに最新話が発表された作品から選出。


◆「CREA夜ふかしマンガ大賞2024」選考委員の皆さん





◆第1位は、谷口菜津子さんの『じゃあ、あんたが作ってみろよ』
 第3回の大賞受賞作は谷口菜津子さんの『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(ぶんか社)に。「男らしさ」「女らしさ」という言葉さえとっくにアウトな現代でも、それにこだわる人は絶滅していないのが現状。本作の主人公・勝男も見た目とキャリアこそハイスペックでも中身はバリバリの「昭和男」です。

 自分は台所に立たないくせに、恋人・鮎美の手料理に上から目線でアドバイスする始末。完璧人生まっしぐらのつもりでしたが、なんと鮎美にプロポーズをスパッと断られ――と、痛快なイントロでスタートするのですが、この作品はいい意味で予想を裏切ってくれます。


「CREA夜ふかしマンガ大賞2024」第1位に輝いた『じゃあ、あんたが作ってみろよ』谷口菜津子/ぶんか社 写真=平松市聖


 悲嘆にくれる勝男は料理に挑戦。その難しさを知り、恋人に見放された自分から「変わりたい」と涙をこぼすのです。一方の鮎美も「男に愛される女らしさ」を目指してきたため「自分の“好き”がわからない」女性。気付きを得た彼女もまた「変わる」にチャレンジしていきます。現代的なテーマの物語を明るく描いた意欲作に、読者と選考委員からの圧倒的な支持が集まりました。


 作者の谷口菜津子さんは、神奈川県出身。Web、情報誌、コミック誌等で活動。『教室の片隅で青春がはじまる』(KADOKAWA)、『今夜すきやきだよ』(新潮社)では、多様性を柔らかな筆致で描いたことに対し、第26回手塚治虫文化賞新生賞を贈られました。



第1位受賞を記念した谷口菜津子さんによる描き下しイラスト/(C)谷口菜津子


◆選考委員のコメント
「自分が食べたいものを自分で作るって究極のセルフケアのひとつなのかも」
フリーアナウンサー・俳優 宇垣美里さん

「この作品を読んで『人って気付けば変われるのかも!?︎』と思えてきました」
ブックライブ書店員 書店員すず木さん

「ジェンダーと言葉にしづらいあれこれがチャーミングに描かれていて最高」
ライター 井口啓子さん

「毎度のことながら谷口作品なのでごはんがめちゃくちゃおいしそうです」
イラストエッセイスト 犬山紙子さん

「『ざまぁ!』からの『このカップルどうなるの!?️』という楽しみもあって良いです」
ジュンク堂書店池袋本店コミック担当 八木泉さん

「まさか男性側を応援することになるとは……」
お笑い芸人 江上敬子さん(ニッチェ)


◆「夜ふかしマンガ大賞2024」授賞式を開催
 8月末日、文藝春秋に谷口先生をお迎えして、「夜ふかしマンガ大賞」としてはじめての授賞式が行われました。

「CREA夜ふかしマンガ大賞2024」授賞式での谷口菜津子さん。写真=平松市聖


◆谷口先生の受賞コメント
「この度は、このような賞をありがとうございます。最近、ちょうどマンガっていろんな種類があるところがいいと思っていたんです。部数が多かったり、みんなに人気だからその作品が面白い、というだけではなく、ぜんぜん売れていないけれど、ある人だけに刺さるようないいマンガもたくさんある。この賞もただ人気なものをランキングする、ではなく、選考委員の方々が丁寧に考えて、「いま本当にこの作品を読者に届けたい」という気持ちで発信してくださっている。こういう賞がたくさんあったらいいなと思います。

 私のマンガも、特に自分の『絶対的にこれが言いたい』というものがあるのではなく、作品を読んで、読者の方に意見を出し合ってもらえたら……と思って描いています。第1位をいただけることで、そういう人たちがもっと増えるのかなと思い、そこがすごく嬉しいと感じています」





「CREA夜ふかしマンガ大賞2024」授賞式の様子。写真=平松市聖



「夜ふかしマンガ大賞2024」第1位記念トロフィー。写真=平松市聖




◆受賞作品の詳細

『じゃあ、あんたが作ってみろよ』谷口菜津子/ぶんか社 各¥880 既刊2巻

 社会人カップルの勝男と鮎美。大学時代から続いた交際は6年目を迎えようとしていた。同棲生活にも慣れ、そろそろ次の段階へ……と考えていた勝男だったが、そんな彼に訪れた、突然の転機とは――!? 慣れないながらに作る料理を通して、ザ・昭和男が今までの「あたりまえ」を見つめなおす注目作。

 第2位以下にも、優等生と問題児の不穏で愉快な友情がクセになる『どくだみの花咲くころ』(城戸志保)、家族、恋、友情……時代を超え、さまざまな関係性で “好きのかたち”を綴る『環と周』(よしながふみ)、性別やそれに基づく古い常識にとらわれずに生きるための道程を丁寧に描く『ボールアンドチェイン』(南Q太)、難聴の大学生×売れない俳優のふたりが手話で心を通わせていくBL作品『カメレオンはてのひらに恋をする。』(厘てく)など、いまという時代を象徴する作品がランクインしました。

◆「CREA夜ふかしマンガ大賞2024」ベスト10ラインナップ
1位 『じゃあ、あんたが作ってみろよ』谷口菜津子(ぶんか社)
2位 『どくだみの花咲くころ』城戸志保(講談社)
3位 『環と周』よしながふみ(集英社)
4位 『ボールアンドチェイン』南Q太(マガジンハウス)
5位 『カメレオンはてのひらに恋をする。』厘てく(スクウェア・エニックス)
6位 『君と宇宙を歩くために』泥ノ田犬彦(講談社)
7位 『恋とか夢とかてんてんてん』世良田波波(マガジンハウス)
8位 『夏の終点』西尾拓也(集英社)
9位 『かわいすぎる人よ!』綿野マイコ(KADOKAWA)
10位『ふつうの軽音部』原作 クワハリ 漫画 出内テツオ(集英社)



◆「CREA夜ふかしマンガ大賞」とは
マンガ好きの推薦者とCREA編集部員、そして読者の投票により選ばれた「思わず夜ふかしして読みたくなる」そして、「いま、CREA読者に本当におすすめしたい」作品に贈る賞。2023年7月~24年6月に単行本の新刊が発売された(ただし、合計5巻以内)、もしくは、雑誌などに最新話が発表された作品から選出。

 CREA WEB(https://crea.bunshun.jp/)でも「夜ふかしマンガ特集」と題して特設ページを開設、マンガに関するオリジナルコンテンツを続々公開予定です。ぜひご注目ください。




 ■掲載誌情報  雑誌名:『CREA』2024年秋号
  発売日:2024年9月6日
  特別定価:980円(税込)
  発売元:株式会社文藝春秋

  「CREA WEB」
  https://crea.bunshun.jp/



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