©あべゆみこ

最近、公衆トイレで「汚く使うな!」と上から目線で書いてある貼り紙を見たことがありません。たいてい「いつも綺麗に使って下さって、ありがとうございます」と書いてあります。

これは、子どものしつけに応用できるんですよ。これを“トイレの貼り紙効果”と名付けました。

どのようなものなのか、『「テキトー母さん」流子育てのコツ』の著者の立石美津子がお話しします。

百聞は一見に如かず

「片付けなさい!」「靴を揃えなさい!」と口を酸っぱくして言うよりも、片付いている状態の写真や玄関の床に足型を貼っておくと、あっという間にきちんと揃えることが出来るようになります。

どうしてかというと…人間の脳で処理される感覚の9割近くは、目から入る情報だからです。

人は視覚優位で“百聞は一見に如かず”なのです。聴覚に何度も訴えられるより、視覚に訴えられた方が心に残ります。

先生が授業で黒板に板書したり、パワーポイントでプレゼンするのもこれと同じ効果を狙ったものです。

しかも!

「片付けなさい」と命令口調で書くよりも、トイレの貼り紙のように「いつも綺麗に片付けてくれてありがとうございます」と丁重に書いておくと、子どもは感謝されて嬉しくなり効果的です。

ポイントは2つあります。

  1. 視覚的に見せる
  2. 命令しないで感謝する

具体的に話を進めていきましょう。

子どもが反発する注意の仕方

子どもに次のように言っていませんか?

× 命令して叱る

おもちゃを片付けないとき

「散らかさないで!」
「きちんと片付けなさい!」
「なんど言ったらわかるの!」

靴を揃えないとき

「ちゃんと揃えなさい!」
「ほらまた、脱ぎっぱなしにして!」

言われた側の子どもは“お母さんが怒るから、怖いから”とりあえず言うことは聞きますが、心中穏やかではいられません。

残念ながら、心から「片づけよう」とは思わないのです。その証拠に毎日散らかしっぱなしで、親は同じことを年中無休で叱っています。

また、昔の公衆トイレにはよく「汚く使うな!」と書いてありました。

そして、そういうトイレに限って何故か落書きがしてあったり、チリ紙が散乱しているような気がしていました。

筆者の近所に「ここに自転車を置いたら警察に通報するぞ!!」と凄く怒った荒れた文字でシャッターにデカデカと貼り紙がしてある個人商店があります。

ここを自転車で通るたびに、「不法駐輪しているわけではないのに!」と気分が悪くなります。

× 丁寧に命令する

では、“綺麗に使ってください。お願いします”だったらどうでしょう?

口調は丁寧ですが、やはり汚く使うことを前提でお願いされています。「まだ使ってもいないうちから疑いをかけられている」と感じてしまいます。

でも、“いつも綺麗に使って下さってありがとうございます”と書かれていると、最初から期待され、感謝もされて、なんだか素直に従いたくなりませんか。