翻訳者である村岡花子さんもまた、少女の頃は家庭との縁が薄い人生を歩まれています。
両親の意識レベルは高かったとはいえ経済的には恵まれませんでした。その利発さゆえ、父の思い入れから給費生として東洋英和女学校に入学を許され、授業料を免除され寮生活を送りましたが、学生とはいえ、家庭教師もし、実家に仕送りもしていました。
そして大人になり、自分で築き上げた家族の絆や「ペンで生きる」という夢を守り抜きたいと強く願い、実行している所は、モンゴメリと村岡花子さんの共通点です。
『赤毛のアン』の主人公、「アン・シャーリー」はロマンチックなものが大好きで、おしゃべりで、悲しみを滅多に表に出すことがありません。しかしながら、その根底に流れているモンゴメリが抱えていた孤独を、村岡花子さんは自らの体験を通して理解していたように感じます。そしてまた、孤独を抱えながらも、それを超える強さや優しさ、希望を抱き続けて生きたことも、彼女たちに共通している部分であり、『赤毛のアン』のお話の最大の魅力になっているように思います。
花子の「腹心の友」!~歌人・柳原白蓮~
「花子とアン」を見ていると、主役の「花子」の他に、もう一人強烈なインパクトを放つ女性がいますよね。第4週目から登場した仲間由紀恵さん演じる、伯爵家の令嬢「葉山蓮子」(はやまれんこ)です。
彼女のモデルとなった女性は「大正三美人」と言われた美しき歌人・柳原白蓮です。(本名燁子(あきこ)、1885~1967)。伯爵家の生まれで花子より8歳年上の白蓮。二人は1908年、東洋英和の寄宿舎で出会います。「柳原伯爵令嬢燁子」として編入するのですが、実はすでに「令嬢」ではなく、政略結婚で一男を儲けた後、離婚をして、23歳でこの学校にたどり着きます。
花子は英詩や西洋の物語を翻訳して白蓮に聞かせることを歓びとし、白蓮は、短歌の師である佐々木信綱に花子を紹介し、寄宿舎から白蓮とともに信綱邸に通い、一時は本気で歌人を目指すこともあったほどです。