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代数、幾何、解析の専門家が現代数学の最先端を紹介します。講師陣とカリキュラムの紹介です。
<講師陣>
1.河東泰之(東京大学大学院数理科学研究科教授)
1985年東京大学理学部数学科卒、1989年カリフォルニア大学ロサンゼルス校数学科博士課程修了。2002年日本数学会賞春季賞を受賞。2024年岩波書店より『数学者の思案』を出版
2.下川航也(お茶の水女子大学基幹研究院教授)
1998年東京大学大学院数理科学研究科博士課程修了、1999年東北大学助手、2002年埼玉大学助教授、2013年同教授、2022年お茶の水女子大学教授、現在日本数学会理事。
3.金子昌信(九州大学大学院数理学研究院教授)
1983年東京大学理学部数学科卒、1988年同大学院理学研究科博士課程修了。大阪大学理学部助手、京都工芸繊維大学工芸学部助教授を経て1996年4月九州大学数理学研究科助教授、2002年1月より現職。
4.川平友規(一橋大学大学院経済学研究科教授)
東京大学大学院数理科学研究科修了。博士(数理科学)。専門は複素力学系理論。著書に『レクチャーズオンMathematica』(プレアデス出版)、『微分積分ー1変数と2変数』(日本評論社)、『入門複素関数』(裳華房)がある。
5.清水扇丈(京都大学大学院理学研究科教授)
2014年アレキサンダー・フォン・フンボルト財団(ドイツ)ベッセル賞受賞、前日本数学会理事長、現在は日本数学会理事長代行、京都大学理学研究科教授。専門は偏微分方程式論、特にナビエーストークス方程式。
6.高木俊輔(東京大学大学院数理科学研究科教授)
徳島県生まれ。2000年東京大学理学部数学科卒、04年同大学大学院数理科学研究科博士課程修了。九州大学大学院数理学研究院助手、同大学院特任助教授、東京大学大学院数理科学研究科准教授などを経て18年より現職。
<カリキュラム>
1.10/26(土)【サイズ無限大の行列と量子コンピュータの数学】
私の専門の作用素環論は、フォン・ノイマンが量子力学の数学的基礎に関連して導入したもので、サイズが無限大の行列(作用素、または演算子と呼ばれる)の集合を考えます。現在では数学、理論物理学の様々な話題と関連して発展しています。一方量子コンピュータはホットな話題として注目を集めており、数学・物理学・計算機科学のさまざまな問題と関連しています。量子コンピュータの実現方法は、多くのものが提案されていますが、決定的なものはまだありません。その中で、トポロジカル量子コンピュータと呼ばれるものがもっとも数学的なアプローチに基づいていて、作用素環論と密接に関係しているため、これについて概説します。作用素環について何か知っていることは仮定しません。
2.11/9(土)【結び目理論とその応用】
結び目理論はひもの結び方をトポロジーの観点から研究する分野であり、100年以上に亘り研究が行われています。まず結び方が異なることをどのように数学的に議論するかを紹介します。結び目理論の応用として、例えばイヤフォンコードが絡むのも自然であることも証明されています。最近ではDNAや渦などに結び目が現れ、そのトポロジーが重要な意味を持つことが明らかになっています。そのような他分野の研究に結び目理論が応用される様子も解説します。
3.12/14(土)【楕円モジュラー j-関数、あるいは青春の夢】
モジュラー関数というのは、一種の「高級周期関数」で、歴史的にはよく知られた周期関数である三角関数を、複素変数二重周期関数として一般化した楕円関数というものから派生して、19世紀半ばに生まれた。その後モジュラー関数の理論は発展を続け、現代整数論においても中心的な役割を果たしている。ここでは特に、最も基本的なモジュラー関数である楕円モジュラー関数、とりわけその中でも「(楕円モジュラー) j-関数」の名で知られる関数について、「クロネッカーの青春の夢」として知られる虚数乗法論、位数最大の散在型有限単純群「モンスター」との関係など、いくつかの興味深い性質を概観する。
4.1/25(土)【複素力学系とフラクタル】
海岸線のギザギザやカリフラワーのイボイボは、どんなに小さな部分を拡大しても全体によく似た形が現れる「自己相似性」を持っています。いわゆる、「フラクタル図形」と呼ばれるものです。自己相似性をもつ数学的構造は19世紀から研究の対象とされてきました。とくに複素数の数列を考えると。ごく簡単な漸化式から驚くほど複雑で多様なフラクタル図形が生成されることがわかります。その原理を説明する「複素力学系理論」は、複素解析学がめざましい発展をとげていた100年ほど前のフランスで勃興しました。本講演では、当時の数学界の様子も交えつつ、複素力学系理論がどのように生まれたのかをお話ししたいと思います。
5.2/22(土)【流体方程式の自由境界問題】
非線形(放物型)偏微分方程式を解くにあたり、解を半群とよばれる作用素を用いて表現し, 縮小写像や逐次近似によって適切な関数空間で解を構成する方法は汎用性の高い画期的な方法です。この半群による方法は半線形な非線形方程式に有効ですが、準線形な非線形方程式に対しては正則性の損失を生じさせてしまい、これを回避する一つの考え方に最大正則性があります。流体の運動を記述するナビエーストークス方程式方程式は半線形な非線形方程式ですが、自由境界問題では自由境界を固定境界に直す変換によって準線形な非線形方程式となります。本講演では、最大正則性について概説し、その応用としてナビエーストークス方程式方程式で記述される自由境界問題の解の一意存在が得られることを紹介いたします。
6.3/22(土)【代数幾何と特異点】
いくつかの多項式の共通零点集合として表される図形を代数多様体といい、代数多様体上の点のうち、滑らかでない、捻れたり尖ったりしている点のことを特異点といいます。代数幾何学は、代数多様体の性質を代数・幾何・解析の様々な手法を駆使して調べる学問です。現代代数幾何学では代数多様体の特異点の解析が不可欠であり、そのために特異点の悪さを測る種々の不変量が導入されています。この講演では、廣中平祐の特異点解消定理、佐藤幹夫のb関数(ベルンシュタイン佐藤多項式)などに触れつつ、いくつかの不変量について解説します。
現代数学探訪2024
講師:河東泰之(東京大学教授)、下川航也(お茶の水女子大学教授)、
金子昌信(九州大学教授)、川平友規(一橋大学教授)、清水扇丈(京都大学教授)、
高木俊輔(東京大学教授)
開催日時:初講日(もしくは第 1回) 10/26(土) 13:30~15:00
受講料金:会員/一般(入会不要)税込23,100円(全6回) ※見逃し配信有り
主催:NHK文化センター青山教室
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