2023年12月に策定された「こども未来戦略」において、「多子世帯の大学等の授業料等無償化」が盛り込まれ、話題になりました。
我が子が無償化の対象となるかの条件が分かりづらい部分もありますので、制度の内容を確認していきましょう。
令和7年度から「多子世帯の大学等の授業料等無償化」開始!
政府は「次元の異なる少子化対策」として、令和5年12月22日に「こども未来戦略」を閣議決定しました。
そのなかで「高等教育費により理想のこども数を持てない状況を払拭するため、2025年度から、多子世帯の学生等については授業料等を無償とする措置等を講ずること」という記述が盛り込まれ、条件付きではありますが「所得制限なしの大学授業料無償化」が実現することになりました。
他にも今年10月からは児童手当の大幅な拡充(子どもが18歳となった年度の3月31日まで給付期間が延長される、第3子への給付額が月1万円~1万5千円から月3万円に増額されるなど)が始まり、子育て世代の家計にとっては大変助かる制度改正が相次いでいます。
ただ「多子世帯の大学等の授業料等無償化」については、「子ども3人以上の家庭は大学無償化」という言葉に省略されて独り歩きしてしまい、制度内容について誤解を生みやすい状況になっているように、筆者には思えてなりません。
そこで今回は「多子世帯の大学等の授業料等無償化」について公的な文書やサイトを参考にしながら、どのような場合にどれだけの効果が得られるのかを確認し、学んでいこうと思います。学齢期の子どもを3人以上扶養されている方は、ぜひ注目してみてください。
「3人以上の子どもを『扶養』しているか」に注意
まず、今回定められる大学等授業料無償化制度において対象となる「多子世帯」とは、単純に「子どもを3人以上育てている家庭」ではないことを押さえておきましょう。
一番ありがちな誤解は「子どもが3人いれば条件に当てはまり、3人のきょうだい全員が大学無償化の対象になる」というものですが、今回の制度はそのように設計されていません。
ここでの「多子世帯」とは「子どもを3人以上『同時に扶養している』世帯」と定義されています。たとえば子どもが3名いる世帯でも、長子がすでに社会人となっていて扶養を外れており、第2子のみ現在大学生であるという状況の場合、第2子は「無償化の対象外」となってしまうのです。
他にも、長子と第2子は現在大学生であるものの、第3子は高卒で働き始めて独立しているという状況も同様に、長子と第2子は無償化の対象外になってしまいます。
大学等授業料無償化の対象となる子どもは「親が3人以上の子どもを同時に扶養している時期に、大学等に在学している人だけ」であると理解しておきましょう。
文部科学省の資料によれば、この制度はあくまでも
「子供が何人いても、全ての世帯の大学等の授業料等の負担を最大2人分までにする(子供が多い家庭への支援という趣旨)。あわせて、『同時に多くの子供を扶養して、家計負担が重くなっている時期』の教育費負担を軽減」
するために定められたものです。そのため、子どもが3人いるだけで自動的に全員の学費が無償化されるというものではなく、「子どもを同時に3人以上扶養している人を、部分的に補助する」という形で制度設計がなされているのです。
筆者としては、「2人きょうだいまでの場合は大学等の学費は全額家庭が負担、3人きょうだい以上であれば全額無償化」という状況では差がありすぎて国民からの反発が予想されるために、「親世帯が3人以上を扶養している間」という条件を付け加えることで、「ひとりっ子や2人きょうだいを扶養する家庭」と「3人以上のきょうだいを扶養する家庭」との間の格差を防ぐように設計したのだと考えています。
このように、今回の制度は大変複雑なものになっていますので、しっかり理解をしていきましょう。筆者が調べた中で、この制度を解説した最もわかりやすい図は文部科学省のホームページに掲載されている「令和7年度からの奨学金制度の改正(多子世帯の大学等の授業料等無償化)に係るFAQ」に掲載されています。
いずれも無償化の対象となるのは「同時に子供を3人以上の扶養している」時に大学等に在学している子だけということがわかるでしょう。
加えて、「大学に在学中の子どもが留年した場合は、留年した本人への授業料等無償化が打ち切られる」というルールや、授業料等無償化の対象となる学校の一覧もチェックしておきましょう。
参考:
文部科学省ホームページ「令和7年度からの奨学金制度の改正(多子世帯の大学等の授業料等無償化)に係るFAQ」