それが明らかになったのは「穴子」たちがそれぞれ自分の力を出しきり、ガチ・レッスンが滞りなく終了したときだった。

三池監督とその人物が目配せをし、偶然にも鶴田氏が参加した「Cチームで行こう」という話になる。

そう、ここからはCチームのメンバーとその人物との超実戦特別授業だ。

「Cチームはヒロインを中心に、家族の核ができていた。家族のバランスがとれていて、奇妙な不条理劇としてちゃんと物語を着地させていたから、この人物に対抗できるのはCチームだと思ったんです」

さて、三池監督が投入したその人物とは……?

『龍が如く 劇場版』『土竜の唄 潜入捜査官REIJI』などの三池作品でも圧倒的な存在感を見せていた遠藤憲一だ。

遠藤憲一さんとガチ演技合戦。セリフはすべてアドリブ。
  

「サプライズで遠藤憲一といきなり芝居をさせられたら、ビックリしながらも宝物になるだろうな~というのがあって。役者にも面白い人がいるんだな、自分も遠藤さんとちゃんと芝居ができるんだなっていうことを体感してもらえればいいんじゃないかなと思ったんです」

それに対して遠藤憲一が「急に監督に呼ばれて、ある意味僕が被害者。こんなの、役者として初めての経験です(笑)」と冗談を言いながら、挨拶をする。そして「僕が問題の長男になって帰ってくるところからエチュードでやろう」と提案。要は、さっきまで何度も何度もやられていた芝居の続き、台本のないその後の物語を即興でやろうという、かなり難易度の高いことを要求したのだ。

これには、鶴田氏も「嬉しいというより、ちゃんとやらなきゃというか、本当の現場に臨むような気持ちになりました(笑)」。

経験を積んでいる彼でもこんな感じなのだから、経験が少ない「穴子」は内心ドキドキしていたに違いない。

だが、そこで繰り広げられたものは、ここで見せられないのが残念なぐらい、そのまま映画にしたいぐらい面白いものだった。

「芝居は引っ張ってくれる人がいるかどうかが大事」と三池監督。「自分のセリフだけにとらわれていると、実生活では普通にやっている大切なリアクションを忘れてしまう。例えば、こう言われたらムカつくよなって考えて、腑に落ちる芝居をすることが大切なんです」

実質的なワークショップはこれですべて終了。この後、「穴長」の三池崇史監督、講師陣、「穴子」たちの懇親会が開かれたが、駆け抜けるように終わったこの1日は参加者たちにも大きなものをもたらしたはずだ。

「すごく貴重な体験でした」と鶴田氏も振り返り、“潜入捜査”としての独自の見解も語ってくれた。

 

レッスン終了後は監督を交えての懇親会。お疲れ様でした~
  
  

「普通のオーディションだったら、芝居の上手い人しかまず選ばれないと思うんですよ。でも、芝居経験があまりなくても受かっているということは、プロフィールや最初に提出された動画通りの人物なのかという確認なんでしょうね。それと、この人はなんか気になるからもっと観たいってことだったと思います」

さらに現場で起きていた意外な事実も明かしてくれた。