認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン(本部:東京都大田区、会長:福井玲)は2017年より日本国内の子どもの貧困対策事業として、低所得のひとり親家庭のためのフードバンク「グッドごはん」を運営し、ひとり親家庭への食品配付を行っています。
今回、グッドごはんを利用するひとり親家庭の保護者を対象に、養育費の受け取り状況等に関する調査を実施しました。その結果、回答者のうち5割が養育費を一度も受け取っていない実情や、相手から身体的・精神的暴力を受けていたことを理由に受け取りや法的請求を躊躇するケースが少なくない状況が明らかとなりました。
アンケート概要
「ひとり親家庭の養育費に関するアンケート」
・実施日程:2024年8月9日~8月25日
・対象者:グッドネーバーズ・ジャパンのフードバンク事業「グッドごはん」の利用者 ※利用者は原則、ひとり親家庭等医療費受給者証保有者に限る(ひとり親家庭等医療費受給者証とは、18歳未満の子どもを養育し、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付される医療費助成制度の医療証)
・回答方法:アンケート回答フォームへの入力(オンライン)
・回答者数:1,481名
・回答者属性:
- 性別:女性 1,435名|男性 29名(無回答除く)
- 年代:10代 0名|20代 53名|30代 349名|40代 756名|50代 313名|60代以上 9名(無回答除く)
- 居住地域:首都圏(主に東京・神奈川・埼玉・千葉)692名|近畿(主に大阪・京都・兵庫・奈良)529名|九州(主に佐賀・福岡)260名
●回答者の5割「養育費を一度も受け取っていない」
子どもの片方の親から養育費を受け取っているかについて質問したところ、「一度も受け取っていない」と回答した人が最も多く、その割合は50.3%に及びました。また、「きまった金額を毎月不足なく受け取っている」と答えた人はわずか2割程度にとどまりました。
養育費の受け取り状況
養育費を継続的に受け取っていない回答者(養育費受け取り状況の質問に対する回答で「きまった金額を毎月不足なく受け取っている」「その他」を選択しなかった回答者、以下同)に対し、受け取っていない理由を質問した結果、「相手が支払いを拒否しているため」「離別当初から相手が経済的に不安定なため」「相手から身体的/精神的暴力やハラスメントを受けていたことから、相手と関わりたくないため」「相手が行方不明になった・一方的に連絡を途絶えさせたため」と回答した人が比較的多い割合を占めました。
養育費を継続的に受け取っていない理由
養育費の受け取りに関し、自由記述回答では、相手に支払い能力がないために受け取りがかなわない事情や、子どもとの面会交流が養育費支払いの対価とはならないにもかかわらず面会を交換条件にされる状況に苦悩するケースがみられました。
●相手による身体的・精神的暴力の影響
養育費を継続的に受け取っていない回答者のうち、相手と養育費の取り決めをしていない、また、養育費を支払うよう相手に直接働きかけたことがない人はいずれも約半数でした。
相手と養育費の取り決めをしたか
養育費を支払うよう自分から直接相手に働きかけたことがあるか
養育費の取り決めをしなかった理由、および相手に直接支払いを働きかけたことがない理由については、ともに「相手から身体的/精神的暴力やハラスメントを受けていたことから、相手と関わりたくない(なかった)ため」が最多の割合を占めました。
相手と養育費の取り決めをしなかった理由
養育費を支払うよう自分から直接相手に働きかけたことがない理由
自身に暴力やハラスメントを加えてきた相手とコミュニケーションをとることにおいて、多大な苦痛が伴うことは想像に難くありません。相手から身体的/精神的暴力やハラスメントを受けていたため相手と関わりたくないことを理由として、養育費の取り決めや相手への働きかけを行ったことがないと答えた人からは、下記のような声が上げられました。
一方、養育費について「きまった金額を毎月不足なく受け取っている」と答えた人においても、受け取りにおける相手とのコミュニケーションに関し精神的負担を感じている様子がみられました(自由記述回答)。
●養育費の金額が少なすぎる状況も
「きまった金額を毎月不足なく受け取っている」と回答した人において、受け取り額の少なさを問題視する状況もうかがえました。1か月あたりの受け取り金額(子どもが複数人いる場合は合計額)を同回答者に尋ねた結果、月額1~5万円台と回答した人が約6割でした。回答者が養育する20歳未満の子どもの人数別に確認すると、子ども1人あたりの受け取り金額が月額1万円にも満たない家庭もみられます。
受け取っている養育費の金額 (月額) [養育する20歳未満の子どもの人数別]
文部科学省が実施した子どもの学習費に関する調査結果*によると、たとえば公立小学校に通う子どもの学習費のみでも1人あたり年間約35万円がかかり、月額換算で3万円近くが必要と算出できます。学習費に加え、食費、医療費、習い事など、子どもを養い育てるためにはあらゆる費用が必要となりますが、今回の調査で「きまった金額を毎月不足なく受け取っている」と回答した人に対し「現在受け取っている養育費の金額は、子どもの教育や監護に必要な費用として適切だと思うか」を質問したところ、8割以上が「少なすぎる」「やや少ない」と答えました。
現在受け取っている養育費の金額は子どもの教育や監護に必要な費用として適切だと思うか
養育費の金額を取り決める場においては、裁判所が公開している「養育費算定表」が金額の基準として広く活用されています。しかし、本調査で「きまった金額を毎月不足なく受け取っている」と回答した人の自由記述回答では、同算定表での金額が少なく思うとの意見が見受けられ、「子供を育てていくための費用として現実的な金額でない」などのコメントがみられました。なお、養育費算定表は2019年に16年ぶりに改定され、多くの場合は改定前よりも1~2万円ほどの増額が見込まれますが、改定以前の基準で受け取っている人は基準額の改定自体を理由として相手に養育費の増額を請求することは基本的に難しいとされます。
以上のように、養育費を毎月不足なく受け取っている場合でも、受け取り額の少なさに困難をおぼえる様子が明らかになりました。
*文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」
●法的手続き実施のハードル
養育費を適切に支払わない相手に対し、当然ながら支払いを請求する権利があります。家庭裁判所等における法的手続きを介して支払いを求める方法がありますが、本調査において養育費を継続的に受け取っていないと回答した人のうち、法的手続きを行ったことがない人の割合は77.7%でした。
養育費の請求に向けて法的な手続きを行ったことがあるか
法的手続きを行ったことがない理由については、5割近くが「弁護士・司法書士等の費用を支払うことが難しいため」「手続きを行うための精神的負担が大きいため」「手続きを行うための時間的負担が大きいため」を選択しました(複数回答)。
養育費の請求に向けて法的な手続きを行ったことがない理由(複数回答)
弁護士・司法書士等の費用に関しては、2024年4月に導入された日本司法支援センター(法テラス)の「ひとり親世帯に対する償還免除制度」により、一定の収入要件等を満たすひとり親は、養育費請求等に必要な弁護士・司法書士費用等の法テラスへの立替金返済免除申請が可能となるなどの制度もみられますが、本調査で養育費を継続的に受け取っていないと回答した人の中で、当該の制度を「知っていた」と答えた人は1割未満でした。
法テラスの「ひとり親世帯に対する償還免除制度」が2024年4月に導入されたことを知っていたか
仮に費用面の不安要素が軽減された場合であっても、法的手続きにかかる時間的・精神的負担は残存します。本調査で、養育費請求にかかる法的手続きを行ったことがあると回答した人のうち8割近くが、手続き実施にあたり他者からのサポートを受けたことがわかり、法的な手続きを自力で行うことが困難な状況が推察されます。
養育費請求に向けた法的手続きの実施にあたり他者からサポートを受けたか
養育費請求に向けた法的手続きの実施にあたりサポートを受けた相手(複数回答)
なお、2024年5月に公布された民法等の一部を改正する法律において「法定養育費制度」が盛り込まれ、ケースによって法的手続きの簡素化が期待されますが、本調査で養育費を継続的に受け取っていない人のうち、この制度の導入について「知っていた」と回答した人は5%でした。
2024年5月に成立した改正民法において「法定養育費制度」が新設されたことを知っていたか
制度の整備により法的手続きの簡素化への効果が期待されるものの、法的な手続きを行うこと自体に対する精神的負荷は少なくないと考えられます。回答者からは、自由記述回答で下記のような声が寄せられました。
●子どもの権利が当然に守られる社会へ
ひとり親世帯の子どもの養育に関し、共同親権を可能とする民法などの改正案が2024年5月に日本の国会で可決されましたが、共同親権が施行された後も、別居親による養育費の支払い義務は変わらず生じます。養育費を受け取ることは子どもの権利であり、子どもは適切な養育費のもとで健やかに育ち、生活することができます。諸外国では、行政が養育費の立替えや徴収を行う仕組みなどがみられ、親の状況によらず子どもが養育費を得られるような社会的制度が構築されている場合もあります。
子どもが養育費を受け取れずに貧困に陥ったり、教育や進学を諦めたりする事態が起きてしまえば、将来の可能性や選択肢が狭まり、貧困から抜け出せないまま大人になってしまうリスクが生じます。そのようにして次世代にも貧困が連鎖すれば、未来の社会に影響が及んでしまうため、養育費の未払いを一因とした子どもの貧困は各家庭の問題にとどまらず、社会全体で取り組むべき課題と言えます。
本調査で、子どもの片方の親に対する精神的恐怖などから相手へ直接支払いを働きかけることができないケースや、費用面・精神面の負担から支払い請求のための法的手続きを断念せざるを得ない場合があることが明らかとなりましたが、そのような状況下でも養育費の受け取りにかかる子どもの権利が厳然に守られるよう、社会的枠組みのさらなる強化が求められます。たとえば、離婚時に専門的な第三者機関が介入し養育費について取り決める、相手の給与から養育費を天引きするなど、具体的な制度や対策に関し検討の余地があるのではないでしょうか。そして、いかなる対策においても、国の未来の財産である子どもが健やかに生きる権利を最重要に位置づけ、それを守り抜くことが、社会全体の発展や安定につながると考えます。
ーーー
■団体について
特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパンは、国際組織グッドネーバーズ・インターナショナルの一員として、2004 年に開設されました。「子どもの笑顔にあふれ、誰もが人間らしく生きられる社会」を目指し、国内外の子ども支援を行っています。公益性の高い団体である「認定NPO 法人」として東京都から認可を受けています。
https://www.gnjp.org/
■ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」とは
「グッドごはん」とは、ひとり親家庭等医療費受給者証をもつ、所得が限度額未満のひとり親家庭を対象に、食品を毎月無料で配付する事業です。2017年9月の事業開始以降、のべ94,666世帯に食品をお渡ししてきました*。
首都圏、近畿および九州における約50か所*の配付拠点にて、企業や個人の寄付によって集まったお米や調味料、レトルト食品、お菓子など、約10,000円相当のカゴいっぱいの食品をひとり親家庭に配付しています。
*2024年8月時点
https://www.gnjp.org/work/domestic/gohan/
※通常、配付拠点に直接取りに来られる方を対象に食品を配付しています
※生活保護受給中の方は対象外です
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今回、グッドごはんを利用するひとり親家庭の保護者を対象に、養育費の受け取り状況等に関する調査を実施しました。その結果、回答者のうち5割が養育費を一度も受け取っていない実情や、相手から身体的・精神的暴力を受けていたことを理由に受け取りや法的請求を躊躇するケースが少なくない状況が明らかとなりました。
アンケート概要
「ひとり親家庭の養育費に関するアンケート」
・実施日程:2024年8月9日~8月25日
・対象者:グッドネーバーズ・ジャパンのフードバンク事業「グッドごはん」の利用者 ※利用者は原則、ひとり親家庭等医療費受給者証保有者に限る(ひとり親家庭等医療費受給者証とは、18歳未満の子どもを養育し、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付される医療費助成制度の医療証)
・回答方法:アンケート回答フォームへの入力(オンライン)
・回答者数:1,481名
・回答者属性:
- 性別:女性 1,435名|男性 29名(無回答除く)
- 年代:10代 0名|20代 53名|30代 349名|40代 756名|50代 313名|60代以上 9名(無回答除く)
- 居住地域:首都圏(主に東京・神奈川・埼玉・千葉)692名|近畿(主に大阪・京都・兵庫・奈良)529名|九州(主に佐賀・福岡)260名
●回答者の5割「養育費を一度も受け取っていない」
子どもの片方の親から養育費を受け取っているかについて質問したところ、「一度も受け取っていない」と回答した人が最も多く、その割合は50.3%に及びました。また、「きまった金額を毎月不足なく受け取っている」と答えた人はわずか2割程度にとどまりました。
養育費の受け取り状況
養育費を継続的に受け取っていない回答者(養育費受け取り状況の質問に対する回答で「きまった金額を毎月不足なく受け取っている」「その他」を選択しなかった回答者、以下同)に対し、受け取っていない理由を質問した結果、「相手が支払いを拒否しているため」「離別当初から相手が経済的に不安定なため」「相手から身体的/精神的暴力やハラスメントを受けていたことから、相手と関わりたくないため」「相手が行方不明になった・一方的に連絡を途絶えさせたため」と回答した人が比較的多い割合を占めました。
養育費を継続的に受け取っていない理由
養育費の受け取りに関し、自由記述回答では、相手に支払い能力がないために受け取りがかなわない事情や、子どもとの面会交流が養育費支払いの対価とはならないにもかかわらず面会を交換条件にされる状況に苦悩するケースがみられました。
●相手による身体的・精神的暴力の影響
養育費を継続的に受け取っていない回答者のうち、相手と養育費の取り決めをしていない、また、養育費を支払うよう相手に直接働きかけたことがない人はいずれも約半数でした。
相手と養育費の取り決めをしたか
養育費を支払うよう自分から直接相手に働きかけたことがあるか
養育費の取り決めをしなかった理由、および相手に直接支払いを働きかけたことがない理由については、ともに「相手から身体的/精神的暴力やハラスメントを受けていたことから、相手と関わりたくない(なかった)ため」が最多の割合を占めました。
相手と養育費の取り決めをしなかった理由
養育費を支払うよう自分から直接相手に働きかけたことがない理由
自身に暴力やハラスメントを加えてきた相手とコミュニケーションをとることにおいて、多大な苦痛が伴うことは想像に難くありません。相手から身体的/精神的暴力やハラスメントを受けていたため相手と関わりたくないことを理由として、養育費の取り決めや相手への働きかけを行ったことがないと答えた人からは、下記のような声が上げられました。
一方、養育費について「きまった金額を毎月不足なく受け取っている」と答えた人においても、受け取りにおける相手とのコミュニケーションに関し精神的負担を感じている様子がみられました(自由記述回答)。
●養育費の金額が少なすぎる状況も
「きまった金額を毎月不足なく受け取っている」と回答した人において、受け取り額の少なさを問題視する状況もうかがえました。1か月あたりの受け取り金額(子どもが複数人いる場合は合計額)を同回答者に尋ねた結果、月額1~5万円台と回答した人が約6割でした。回答者が養育する20歳未満の子どもの人数別に確認すると、子ども1人あたりの受け取り金額が月額1万円にも満たない家庭もみられます。
受け取っている養育費の金額 (月額) [養育する20歳未満の子どもの人数別]
文部科学省が実施した子どもの学習費に関する調査結果*によると、たとえば公立小学校に通う子どもの学習費のみでも1人あたり年間約35万円がかかり、月額換算で3万円近くが必要と算出できます。学習費に加え、食費、医療費、習い事など、子どもを養い育てるためにはあらゆる費用が必要となりますが、今回の調査で「きまった金額を毎月不足なく受け取っている」と回答した人に対し「現在受け取っている養育費の金額は、子どもの教育や監護に必要な費用として適切だと思うか」を質問したところ、8割以上が「少なすぎる」「やや少ない」と答えました。
現在受け取っている養育費の金額は子どもの教育や監護に必要な費用として適切だと思うか
養育費の金額を取り決める場においては、裁判所が公開している「養育費算定表」が金額の基準として広く活用されています。しかし、本調査で「きまった金額を毎月不足なく受け取っている」と回答した人の自由記述回答では、同算定表での金額が少なく思うとの意見が見受けられ、「子供を育てていくための費用として現実的な金額でない」などのコメントがみられました。なお、養育費算定表は2019年に16年ぶりに改定され、多くの場合は改定前よりも1~2万円ほどの増額が見込まれますが、改定以前の基準で受け取っている人は基準額の改定自体を理由として相手に養育費の増額を請求することは基本的に難しいとされます。
以上のように、養育費を毎月不足なく受け取っている場合でも、受け取り額の少なさに困難をおぼえる様子が明らかになりました。
*文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」
●法的手続き実施のハードル
養育費を適切に支払わない相手に対し、当然ながら支払いを請求する権利があります。家庭裁判所等における法的手続きを介して支払いを求める方法がありますが、本調査において養育費を継続的に受け取っていないと回答した人のうち、法的手続きを行ったことがない人の割合は77.7%でした。
養育費の請求に向けて法的な手続きを行ったことがあるか
法的手続きを行ったことがない理由については、5割近くが「弁護士・司法書士等の費用を支払うことが難しいため」「手続きを行うための精神的負担が大きいため」「手続きを行うための時間的負担が大きいため」を選択しました(複数回答)。
養育費の請求に向けて法的な手続きを行ったことがない理由(複数回答)
弁護士・司法書士等の費用に関しては、2024年4月に導入された日本司法支援センター(法テラス)の「ひとり親世帯に対する償還免除制度」により、一定の収入要件等を満たすひとり親は、養育費請求等に必要な弁護士・司法書士費用等の法テラスへの立替金返済免除申請が可能となるなどの制度もみられますが、本調査で養育費を継続的に受け取っていないと回答した人の中で、当該の制度を「知っていた」と答えた人は1割未満でした。
法テラスの「ひとり親世帯に対する償還免除制度」が2024年4月に導入されたことを知っていたか
仮に費用面の不安要素が軽減された場合であっても、法的手続きにかかる時間的・精神的負担は残存します。本調査で、養育費請求にかかる法的手続きを行ったことがあると回答した人のうち8割近くが、手続き実施にあたり他者からのサポートを受けたことがわかり、法的な手続きを自力で行うことが困難な状況が推察されます。
養育費請求に向けた法的手続きの実施にあたり他者からサポートを受けたか
養育費請求に向けた法的手続きの実施にあたりサポートを受けた相手(複数回答)
なお、2024年5月に公布された民法等の一部を改正する法律において「法定養育費制度」が盛り込まれ、ケースによって法的手続きの簡素化が期待されますが、本調査で養育費を継続的に受け取っていない人のうち、この制度の導入について「知っていた」と回答した人は5%でした。
2024年5月に成立した改正民法において「法定養育費制度」が新設されたことを知っていたか
制度の整備により法的手続きの簡素化への効果が期待されるものの、法的な手続きを行うこと自体に対する精神的負荷は少なくないと考えられます。回答者からは、自由記述回答で下記のような声が寄せられました。
●子どもの権利が当然に守られる社会へ
ひとり親世帯の子どもの養育に関し、共同親権を可能とする民法などの改正案が2024年5月に日本の国会で可決されましたが、共同親権が施行された後も、別居親による養育費の支払い義務は変わらず生じます。養育費を受け取ることは子どもの権利であり、子どもは適切な養育費のもとで健やかに育ち、生活することができます。諸外国では、行政が養育費の立替えや徴収を行う仕組みなどがみられ、親の状況によらず子どもが養育費を得られるような社会的制度が構築されている場合もあります。
子どもが養育費を受け取れずに貧困に陥ったり、教育や進学を諦めたりする事態が起きてしまえば、将来の可能性や選択肢が狭まり、貧困から抜け出せないまま大人になってしまうリスクが生じます。そのようにして次世代にも貧困が連鎖すれば、未来の社会に影響が及んでしまうため、養育費の未払いを一因とした子どもの貧困は各家庭の問題にとどまらず、社会全体で取り組むべき課題と言えます。
本調査で、子どもの片方の親に対する精神的恐怖などから相手へ直接支払いを働きかけることができないケースや、費用面・精神面の負担から支払い請求のための法的手続きを断念せざるを得ない場合があることが明らかとなりましたが、そのような状況下でも養育費の受け取りにかかる子どもの権利が厳然に守られるよう、社会的枠組みのさらなる強化が求められます。たとえば、離婚時に専門的な第三者機関が介入し養育費について取り決める、相手の給与から養育費を天引きするなど、具体的な制度や対策に関し検討の余地があるのではないでしょうか。そして、いかなる対策においても、国の未来の財産である子どもが健やかに生きる権利を最重要に位置づけ、それを守り抜くことが、社会全体の発展や安定につながると考えます。
ーーー
■団体について
特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパンは、国際組織グッドネーバーズ・インターナショナルの一員として、2004 年に開設されました。「子どもの笑顔にあふれ、誰もが人間らしく生きられる社会」を目指し、国内外の子ども支援を行っています。公益性の高い団体である「認定NPO 法人」として東京都から認可を受けています。
https://www.gnjp.org/
■ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」とは
「グッドごはん」とは、ひとり親家庭等医療費受給者証をもつ、所得が限度額未満のひとり親家庭を対象に、食品を毎月無料で配付する事業です。2017年9月の事業開始以降、のべ94,666世帯に食品をお渡ししてきました*。
首都圏、近畿および九州における約50か所*の配付拠点にて、企業や個人の寄付によって集まったお米や調味料、レトルト食品、お菓子など、約10,000円相当のカゴいっぱいの食品をひとり親家庭に配付しています。
*2024年8月時点
https://www.gnjp.org/work/domestic/gohan/
※通常、配付拠点に直接取りに来られる方を対象に食品を配付しています
※生活保護受給中の方は対象外です
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