【家電コンサルのお得な話・214】東京都の小池百合子知事は9月27日の記者会見で、理想のキャリアと生活設計を支援するための新たなツール「イフキャリ」を発表した。このツールは、自分自身の収入やライフイベントを基に将来の生涯収支をシミュレーションできるサービスである。特に、いわゆる「年収の壁」の問題への理解を深め、自らの働き方やキャリア設計を見直すことを目的としている。
フルバージョンの公開は10月下旬
イフキャリには、気軽に将来設計するライト版と、より詳細な設定ができるフルバージョンがある。現在、インターネットで公開されているのはライト版のみで、フルバージョンについては10月下旬の公開予定となっている。
「年収の壁」とは、特定の年収を超えると税や社会保険料の負担が増して手取りが減るため、パートやアルバイトなどで働く人がそれ以上働かないよう控える現象を指す。これが原因で労働力不足に陥ることが問題視されており、行政としては正確な理解を促す必要性が高まっている。
働き方の変化による生涯収支を可視化
イフキャリはこうした状況に対応するため、働き方の変化による生涯収支への影響を可視化することで、将来の選択肢をより明確にし、計画的にキャリアと生活を設計できるように開発されたサポートツールである。
現在公開されているライト版の特徴として、現在の収入や家族構成、将来ほしい子どもの人数などの簡単な入力だけで、生涯収支の試算結果がグラフで表示される点が挙げられる。
また、イフキャリは東京都の施策や制度との連携が図られており、シミュレーション結果に基づき、利用者が受けられる行政サービスや支援制度などを具体的に提案してくれるため、自分に合ったサポートを見逃すことなく活用できる。
例えば、育児と仕事の両立に関する支援制度やデジタルビジネススキル習得支援事業など、多岐にわたる施策を詳細に知ることができる。都民にとって便利なツールとなるだろう。
イフキャリの導入は、働き方や生活設計といった将来に向けた選択肢に意識を向けることを促し、都民一人一人が理想のキャリアと暮らしを考えるきっかけになるだろう。
特に、キャリアの見直しや転職を考えている人、ライフイベントに直面している人にとって、イフキャリは参考にしたいツールだ。今後、公開が予定されている詳細な設定ができるフルバージョンにも期待を寄せながら提供される日を待ちたいと思う。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)
■Profile
堀田泰希
1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。