トンネル入り口の角度には知られざる秘密が…(画像はイメージ)

自動車を運転していると、当たり前のように見かける「トンネル」。トンネルにも「水中トンネル」「都市トンネル」などの分類があるが、もっともなじみ深いのが山を掘削した「山岳トンネル」だろう。実は、山岳トンネルの入り口の形には意外な秘密が隠されているようだ。

入り口が“斜めカット”になっている理由とは

トンネルの出入り口は「坑口」と呼ばれ、この坑口には土砂崩れなどに備えるための「坑門」という構造物が作られている。坑門の形にはさまざまなタイプがあるが、一般的にトンネルと聞いて思い浮かぶのが、入り口の断面が地面から垂直に立っているように見える「面壁型」のトンネルだろう。

一方で、新東名高速道路などでよく見かけるのが、竹を割ったような断面の「竹割型」の坑門。地面に対して、断面が斜めになっているのが大きな特徴だ。この竹割型は山間部の景観に配慮して作られているのだが、もう一つ大きなメリットがある。

それが、「ドライバーがトンネルに入る際の圧迫感をなくす」という効果。垂直の坑門と違い、竹割型の場合は入り口がゆるやかに広くみえるように設計されているため、トンネルに入る際にプレッシャーを感じずにすむという。

ドライバーは走行中に圧迫感を感じると、無意識に減速してしまう心理が働く。そして、トンネル入り口部での暗がりや圧迫感での一時的な減速は渋滞の大きな原因になってしまう。NEXCO西日本によると、交通集中渋滞の約20%がトンネル入り口部で発生しているという。

ちなみに、竹割型坑門の出口は斜めカットになっている場合と、そうでない場合がある。景観に合わせて入り口と同じく斜めに作る場合もあれば、上り線と下り線が離れている場合は形状が異なることもあるそうだ。

もちろん周囲の地形や景観、施工性、維持のしやすさ、走行環境、さらに山の形状により坑門の形が決まるので、渋滞解消に繋がるからといって全てのトンネルに竹割型が適用されるわけではない。運転の際は、トンネルの坑門の形を意識してみると新たな発見ができそうだ。(フリーライター・波多野陽介)

■Profile

波多野陽介

学生時代からクイズ好きで、卒業後からフリーライターとして活動中。世の中の様々な雑学、トリビアを中心にオールジャンルの記事を手掛けている。知識量を増やすべく日々リサーチ中。