ビジネスシーンはもちろん、日常生活においてもハンコを押す際に口にする「押印」や「捺印」という単語。ところが、いざという時に「あれ? 押印と捺印どっちで言うのが正解だっけ?」と迷ったことのある人も少なくないのではないだろうか。今回は、実のところあまり知られていない「押印」と「捺印」の違いと正しい使い方について解説する。
重要な書類の際は押印? それとも捺印?
(画像はイメージ)
「押印」と「捺印」は何が違う?
そもそも「押印」は「記名押印(きめいおういん)」を略した言葉であり、記名とは自筆ではない方法で名前を記すこと。つまり「押印」は、代筆や印字でもともと名前の表記がある書類、あるいは記名も署名も何もない書類にただハンコを押すことを指している。
一方、「捺印」は「署名捺印(しょめいなついん)」を意味する言葉。自筆で名前を書くことを署名というので、「捺印」は自筆のサインと一緒にハンコを押す場合を指す。ただし押印と同じく、単にハンコのみを押すことを意味するケースもあるようだ。
つまり両者の大きな違いは、名前が自筆で書かれているか否かという点。単にハンコを押してもらうだけの場面で用いられることもあるが、はっきりとした違いがあるため普段から正しく使い分けることが大切だ。
一般的に法律的な効力が高く、重要な契約書を交わす場面などで使用されるのは「捺印」。一方で署名がなく他人によるコピーや偽造が簡単な「押印」は、単に名前の表示が目的とされるような場面で使われることが多い。
「押捺」と「調印」は?
似た言葉で「押捺」と「調印」についてもご紹介しよう。どちらもハンコを押すという意味だが、「押捺」は親指に朱肉をつけて押す拇印を指すことが多い。また「調印」は国家や企業間で条約を締結する際など、重要な場面で使用される言葉だ。
ビジネスシーンなどでよく使われる言葉でも、実は意味を正しく理解できていないものが他にもあるかもしれない。後々大きな失敗をしないためにも、正確な知識を身につけておこう。(フリーライター・井原亘)
■Profile
井原亘
元PR会社社員の30代男性。現在は流行のモノや現象を追いかけるフリーライターとして活動中。ネットサーフィンとSNS巡回が大好きで、暇さえあればスマホをチェックしている