展覧会は広島市現代美術館にて、2026 年夏開催予定



メル・チン Mel Chin Photo: Miriam Heads

第12 回ヒロシマ賞受賞者がメル・チンに決定しました
ヒロシマ賞は、美術の分野で人類の平和に貢献した作家の業績を顕彰し、核兵器廃絶と世界恒久平和を願う「ヒロシマの心」を、美術を通して広く世界へとアピールすることを目的として、広島市が1989 年に創設したものです。3 年に1 回授与されるこの賞は過去11 組のアーティストが受賞しており、今回、第12 回目のヒロシマ賞受賞者にメル・チン(1951 年生まれ、アメリカ出身)が決定しました。
2026 年夏( 予定) には第12 回ヒロシマ賞の授賞式を行い、あわせて当館においてメル・チンのヒロシマ賞受賞記念展を開催します。

メル・チンは、環境問題を始めとする複雑な社会問題に動機づけられたアイデアを、カテゴリーにとらわれないユニークな方法によって表現してきた作家です。
彫刻、ドローイング、絵画、ビデオ、アニメーション、ビデオゲームから大規模な公共インスタレーションまで、その幅広い作品群は、多様なバックグラウンドを持つ人々をひきつけ、社会への関心を培ってきました。また、地域住民との共同作業や科学的なアプローチによって、長期にわたるプロジェクトを展開し、アートがいかにして社会的な意識と責任を喚起しうるかを探求してきました。
これまでの半世紀近くにわたるキャリアの中で、光州ビエンナーレやリヨン・ビエンナーレなどの国際美術展に参加し、また全米各地の美術館で個展を開催するなど第一線で活躍してきました。2014 年にはニューオリンズ美術館で、2018 年にニューヨークのクイーンズ美術館で大規模な回顧展が開催されました。
受賞理由
環境問題を始めとする様々な社会問題に着想を得て、彫刻や絵画、インスタレーションなど多様な手法を取り入れたアートを創作し、その活動に地域住民を巻き込むことで、複雑な社会問題への市民意識を喚起することを探求してきたことは、ヒロシマ賞の主旨に沿うものであり、また、同氏の展覧会の開催を通じて「ヒロシマの心」を広く全世界にアピールすることが期待されるため、今回の受賞となりました。
受賞メッセージ
この栄誉は言葉では言い尽くせません。私が、人為的気候変動による破壊に見舞われた地で暮らし、絶望の中にある無辜の民に対し残忍な爆撃が継続する現状を遠くから目撃し続けている中での受賞でした。米国市民である私は、紛れもない共犯行為を余儀なくされています。ヒロシマ賞は、この弁解の余地なき残虐行為を支持せず、加担に抗う決意を強固なものとしてくれます。さらに、複雑なアイデアや関係性を発展させ、暴力への抵抗と共感の輪の拡大に通じる理想を追求する手段とすべく全力を尽くすよう私を促してくれます。

2024 年10 月
ノースカロライナ州エジプト・タウンシップ

メル・チン
メル・チン Mel Chin
1951年11月21日生まれ、アメリカ合衆国テキサス州ヒューストン出身

●略歴
1975   ピーボディ・カレッジ(テネシー州ナッシュビル)卒業
2017   S.O.U.R.C.E.(SUSTAINED OPERATIONS UTILIZING RESOURCES for CULTURE,
  COMMUNITIES and the ENVIRONMENT)設立
現在     ノースカロライナ州エジプト・タウンシップ在住

● 主な受賞
1988   国立芸術基金フェローシップ賞(アメリカ)受賞
2007   ペドロ・シエナ賞アニメーション部門(チリ)受賞
2019   マッカーサー・フェローシップ賞(アメリカ)受賞
2021   アメリカ芸術文学アカデミー会員

● 主な個展
1989   ハーシュホーン博物館と彫刻の庭(ワシントンDC)
1990   ウォーカー・アート・センター(ミネソタ州ミネアポリス)
1991   メニル・コレクション(テキサス州ヒューストン)
2006   ステーション現代美術館(テキサス州ヒューストン)ほか
2014   ニューオリンズ美術館(ルイジアナ州ニューオリンズ)ほか
2018   クイーンズ美術館(ニューヨーク)
2022   マディソン現代美術館(ウィスコンシン州マディソン)

●主なプロジェクト
1991-   リヴァイヴァル・フィールド
1995-98 イン・ザ・ネーム・オブ・ザ・プレイス
2006-   オペレーション・ペイダート

●主な国際美術展
1994   ハヴァナ・ビエンナーレ
1997   光州ビエンナーレ
2001   リヨン・ビエンナーレ
2024   プロスペクト・ニューオリンズ
作品紹介



《リヴァイヴァル・フィールド》1991 から継続中
有害廃棄物の埋め立て地の土壌から重金属を抽出するため、葉や茎に高い濃度で重金属を蓄積できるハイパー・アキュミレーター植物を利用して、安価でローテクな土壌汚染の浄化方法を試みる。この実験はアメリカ農務省の研究者と共同で行われ、グリーン・レメディエーション(持続可能な土壌修復)の可能性が確認された。




《私たちの民主主義の奇妙な花》2005
地表の構造物を薙ぎ払うように吹き飛ばす爆弾「デイジーカッター」の形を模した作品。南太平洋の島しょ部の住民には、先祖の霊が天国から飛行機や船で文明の利器を積んで現れるという信仰があったが、第二次世界大戦中に米軍や日本軍がパラシュートで物資を投下する様子を目にし、積み荷を受け入れるために、竹製の張りぼての飛行機を設置した。デイジーカッターはイラク戦争などでも使用され、その爆発は原爆の爆発と誤認された。




《安全な家》2008-2010
ハリケーン・カトリーナ後のニューオーリンズで、土壌の鉛汚染が基準をはるかに超えていることを知り、小児期の鉛中毒を撲滅するための運動「オペレーション・ペイダート」を開始した。この家はこの作戦のアイコンとして、ファンドレッド・ダラー・プロジェクトの集会などが行われる作戦本部として機能した。




《アンムアード》2018
海面上昇によってタイムズスクエアが水没するという未来の可能性を、観客はMicrosoft と共同で開発された機器を使用してAR にアクセスすることによって探索することができる。

ヒロシマ賞について


第8 回ヒロシマ賞受賞記念 オノ・ヨーコ展 希望の路   YOKO ONO 2011(2011) Photo: KeiichiMoto

第9 回ヒロシマ賞受賞記念 ドリス・サルセド展(2014) Photo: KazuhiroUchida


第10 回ヒロシマ賞受賞記念 モナ・ハトゥム展(2017)  Photo: KenKusakari

第11 回ヒロシマ賞受賞記念 アルフレド・ジャー展(2023) Photo: KenichiHanada

主旨
美術の分野で人類の平和にもっとも貢献した作家の業績を顕彰することを通じて、広島市の芸術活動の高揚を図るとともに、「ヒロシマの心」を広く全世界にアピールし、人類の繁栄に寄与する。あわせて、この賞を受賞した作家の展覧会を開催して芸術の発展に寄与し、ヒロシマ賞の意義を高める。

選考の基準と選定方法
<基準>
・美術の分野(平面、立体、映像、デザイン、建築等)で評価の高い活動を行っている個人あるいはグループ。
・ヒロシマの心にふさわしい制作活動を行っている個人あるいはグループ。
・美術館で単独の展覧会を開催する意義がある個人あるいはグループ。
・国籍、年齢は問わない。

<選定方法>
世界各地の美術館長、美術評論家等で構成する「推薦委員」と、過去の受賞者からなる「特別推薦委員」から推薦された作家等をとりまとめ、国内の美術館長、美術評論家等で構成する「選考委員会」で絞り込みを行い、その結果をもとに、有識者、美術専門家等で構成する「選考審議会」で、受賞候補
者を決定する。

◎広島市ヒロシマ賞受賞者選考審議会委員:
池田晃治(広島商工会議所会頭、ひろしま美術館館長)、逢坂恵理子(国立新美術館館長)、
島敦彦(国立国際美術館館長)、千足伸行(広島県立美術館館長)、建畠晢(埼玉県立近代
美術館館長)、寺口淳治(広島市現代美術館館長)、福永治(京都国立近代美術館館長)、
松井一實(広島市長)、三浦篤(大原美術館館長)、吉田幸弘(公立大学法人広島市立大学
芸術学部長)、ラワンチャイクン寿子(福岡市美術館学芸係長)

◎第12 回ヒロシマ賞選考委員会委員:
五十嵐太郎(東北大学大学院工学研究科教授)、植松由佳(国立国際美術館学芸課長)、
大西若人(朝日新聞社編集委員)、尾崎信一郎(鳥取県立美術館館長)、加須屋明子(京
都市立芸術大学美術学部教授)、丹羽晴美(東京都写真美術館事業企画課長)、野中明(広島
市現代美術館副館長)、保坂健二朗(滋賀県立美術館ディレクター)、水沢勉(美術評論家、
美術史家)
※ 2024 年11 月現在(五十音順・敬称略)

過去の受賞者
●第1回(1989 年決定)  三宅一生/デザイン
●第2回(1992 年決定)  ロバート・ラウシェンバーグ/美術
●第3回(1995 年決定)  レオン・ゴラブ&ナンシー・スペロ/美術
●第4回(1998 年決定)  クシュシトフ・ウディチコ/美術
●第5回(2001 年決定)  ダニエル・リベスキンド/建築
●第6 回(2004 年決定)  シリン・ネシャット/美術
●第7回(2007 年決定)  蔡國強/美術
●第8 回(2010 年決定)  オノ・ヨーコ/美術
●第9回(2013 年決定)  ドリス・サルセド/美術
●第10 回(2015 年決定) モナ・ハトゥム/美術
●第11 回(2018 年決定) アルフレド・ジャー/美術
Winner of the 12th Hiroshima Art Prize
The Hiroshima Art Prize, established by the City of Hiroshima in 1989, recognizes the
achievements of artists who have contributed to the peace of humanity through art. It aims
to appeal to the wider world through the medium of art in order to spread the Spirit of
Hiroshima, which wishes for a peaceful world free from nuclear weapons. The prize is
awarded once every three years.

The 12th Hiroshima Art Prize recipient was decided as follows.

1. Recipient
Mr. Mel Chin (born 1951 in the United States of America)

[Artist Profile]
Mr. Mel Chin is an artist whose ideas are inspired by environmental issues and other
complexsocial challenges and are conveyed in distinctive ways that are non-conforming to
established categories. His multidisciplinary body of work, which includes sculptures,
drawings, paintings, videos, animation, video games, and large-scale installation art, has
attracted people from diverse backgrounds and cultivated their interest in societal issues.
In addition, Mr. Chin has created long-term projects that explore how art may inspire social
awareness and responsibility by collaborating with local communities and taking a scientific
approach in art creation.
Over the course of a career spanning nearly half a century, he has been at the forefront of
international art exhibitions, including the Gwangju Biennale and the Biennale de Lyon, as well as solo exhibitions at museums across the United States. In addition, a major retrospective
exhibition was held at the New Orleans Museum of Art in 2014 and at the Queens Museum
in New York in 2018.

2. Reason for Selection
Through dialogue and collaboration, Mr. Chin has attempted to present an alternative
approach to bring about social change through art while deeply engaging with communities. Mr. Chin was chosen as the recipient of this award because we anticipate that the
commemorative exhibition will engage Hiroshima in a novel way through partnerships with
residents and local communities as well as the use of creative materials and venues.

3. Message from the Artist
The significance of this honor cannot be overstated. It comes as I live in an area ravaged by destruction in an era of human-induced climate change and as I continue to be a distant
witness to the ongoing savagery of bombardments upon innocent and desperate civilian
populations. As an American citizen my obligations force an undeniable complicity. The
Hiroshima Art Prize strengthens a resolve to resist the support for this indefensible cruelty
and protest such involvement. The prize obligates another commitment, to foster complex
ideas and relationships to be tools in the pursuit of ideals aligned with resistance to violence and the expansion of empathy.

October, 2024
Egypt Township, North Carolina

Mel Chin
About the Hiroshima Art Prize
Purpose
This project aims to honor the achievements of artists and extol the possibilities of
contemporary art and expression by awarding the Hiroshima Art Prize to the candidate who best expresses the “Spirit of Hiroshima.” A subsequent solo exhibition of the winner’s work
will be held at the Hiroshima City Museum of Contemporary Art, which will increase
awareness of both the artist’s work and the mission of the Hiroshima Art Prize and its
significance.

Selection criteria
・An individual or a group actively engaged in art worldwide (two-dimensional,
three-dimensional, design, fashion, etc.)
・An individual or a group engaged in creative activities related to the “Spirit of Hiroshima”
or peace, and whose achievements are considered to correspond to the purpose of the
Hiroshima Art Prize.
・An individual or a group whose achievements are considered to be appropriate for
exhibition.
・There are no restrictions on nationality or age.
More Info



広島市現代美術館|Hiroshima City Museum of Contemporary Art
〒732-0815 広島市南区比治山公園1-1
TEL: 082-264-1121 FAX: 082-264-1198
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