【家電コンサルのお得な話・223】2024年11月22日、「住民税非課税世帯に1世帯あたり3万円を支給すること」が閣議決定された。国は「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」を打ち出し、その一つとして「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた具体的施策」を示している。具体的施策の一つが「物価高の克服」であり、「物価高の影響を受ける低所得者世帯への支援」として給付金を実施する。ただ、制度的には不完全で、必要とされる世帯に給付されていないケースも多い。
2024年11月22日閣議決定
国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策(資料を基に筆者作成)
自治体ごとに支給の開始時期が異なる可能性
給付金の目的は、「特に物価高の影響を受ける低所得者に対し、迅速に支援を届ける」ことである。給付額の水準は、2023年度から地方公共団体が行ってきた物価高対策を支援するための「重点支援地方交付金」のうち、「低所得世帯支援枠」となる。給付額は、低所得世帯の食料品やエネルギー関係などの消費支出に対する物価高の影響のうち、賃上げや年金物価スライドなどで賄いきれない部分を概ねカバーできるものとしている。
これにより住民税非課税世帯1世帯当たり3万円、子育て世帯については世帯人数が多いことを考慮して、子ども1人当たり2万円を加算することが決定されたのである。
事業の実施はこれまで通り、地方自治体を事業主体となる。自治体ごとに開始時期が異なることと、自治体から連絡のあるプッシュ型となることが考えられる。実施の詳細については決定次第、当コラムで取り上げたいと思う。
繰り返しの給付金、必要な世帯への手当てができていない
これまで政府は住民税非課税世帯への給付金を繰り返し実施しているが、制度的には不完全で、必要な世帯に給付されていないケースも多い。
例えば、コロナ禍で仕事が激減し、多額の融資を受けた個人事業主(住民税非課税事業者)が、妻も家計を支えるために専従者を辞めて働き出した(住民税が課税される)場合などが該当する。
コロナ融資の返済が始まっており、非常に苦しい状況になっていても世帯単位のため、妻が住民税を課税されていれば給付金を手にすることができない。このような世帯はかなり多いと考えられる。
また、逆に多額の資産があっても所得がなければ住民税が課税されず、給付金の支給対象となる。給付金を公平に支給する仕組みづくりは難しいが、実態に応じた制度に改善すべきである。
本質は給付金によるバラ撒き施策ではなく、前政権が一度は掲げた「新自由主義的政策の転換」、「令和版所得倍増」を実現することであり、これしか現政権の信用回復はないだろう。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)
■Profile
堀田泰希
1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。