マンガのように瞬時に声が変えられる時代に(画像はイメージ)

「名探偵コナン」で登場する、主人公の声を変換するネクタイ型変声機。そんなマンガの世界のような、リアルタイムで変声できる技術が次々に生まれている。進化するボイスチェンジャーの現在地を見てみよう。

マンガのように瞬時に声が変えられる時代に(画像はイメージ)

「なりきりマイク」で瞬時にアーティストの声になれる!

今年3月にヤマハが開発し、各地のカラオケ店に導入されたのが「なりきりマイク VOLUME2 Da-iCE」。モノマネせずとも自分の声でマイクで歌うだけで、憧れのアーティストの歌声になれる。22年に実証実験をおこなった際には、Every Little Thingの持田香織さんを起用。第二弾となる今回は、ツインボーカルが魅力の男性アーティストDa-iCEの大野雄大さんと花村想太さんの歌声を再現した。

なりきりマイクに利用されているのは、同社が培ってきたAI技術を駆使した音声合成技術「TransVox(トランスヴォックス)」。歌唱者側がマイクに歌声を通すと、AIが特徴を瞬時に分析。アーティストのボーカル情報を事前に学習しているAIが判断し、アーティストの歌声をその場で合成する。

さらに今回はDa-iCEのツインボーカルを再現し、ボタンで切り替えて2人の歌声に変換する機能も。高音に不安があっても声を1オクターブ切り替えることもでき、性別や年代を問わず楽しむことができる。

ボイスチェンジャーソフトも多く開発されており、Dreamtonics(ドリームトニクス)がリアルタイム音声モーフィングソフト「Vocoflex(ボコフレックス)」を今年7月に発売。10秒間歌ったデータがあれば、AIが学習してリアルタイムで音声変換できる。性別やトーンを指定することで新しい声を生み出すことも可能だ。

特徴的なのが、同ソフトは購入時に身分証明書が必要だということ。音声再現のクオリティが高いため、勝手に相手の声を使ったり、声優の声を使ったりと「許可のない声」が使われるのを避けるよう義務付けられている。

リアルタイムで音声を変えることのできるボイスチェンジャー技術。進化したボイスチェンジャー技術を使って、今後どのようなサービスが生み出されていくのかに期待したい。(フリーライター・佐々木剛)

■Profile

佐々木剛

大手メーカーに勤務後、一念発起してウェブメディア業界に転職。その後フリーライターとして独立し、現在に至る。メーカー時代の経験を活かし、テクノロジー、機械、技術系中心に執筆。