大阪市立自然史博物館では、令和7年2月22日(土)から5月6日(火・休)まで、特別展「貝に沼る -日本の貝類学研究300年史-」を開催します。
チラシビジュアル
美しい殻で人々を魅了する貝。地球上では数万種が知られ、極めて多様性の高い生き物です。中でも日本列島は暖流と寒流双方の影響を受ける位置にあり、またたくさんの島嶼を有することから、世界的に見ても多くの貝類が生息する地域です。このような背景からでしょうか、日本では古来より多くの人が貝のとりこになり、学問としてその実態に迫ろうとしてきました。
この特別展では本草書から初期の図鑑、歴史的な発見をもたらした実物標本、最新の研究技術までを一堂に集め、日本の江戸時代から現代までの貝類学の研究史とその成果をひもときます。歴々の研究者が貝に”沼る”とはどういうことなのか、この特別展で実感しましょう。
○プレス内覧会を、開幕前日の令和7年2月21日(金)12時30分より、大阪市立自然史博物館 本館 集会室および特別展会場で行います。プレス内覧会取材申込書にて前日までにファックスでお申込みください。なお、一般内覧会も午後2時より引き続いて行います。
○広報用画像、読者・視聴者プレゼント用の招待券をご用意しています。
広報用画像申込書、招待券申込書もファックスでお申込みください。
I.開催概要
1.名 称 第55回特別展「貝に沼る -日本の貝類学研究300年史-」
(英題:Obsessed with Shells - 300 Years of Malacology in Japan)
2.主 催 大阪市立自然史博物館
3.会 期 令和7年2月22日(土)~5月6日(火・休)
4.開館時間 2月22日~28日 9:30~16:30(入館は16:00まで)
3月1日~5月6日 9:30~17:00(入館は16:30まで)
5.休 館 日 月曜日(ただし、月曜日が休日の場合はその翌平日)
6.会 場 大阪市立自然史博物館 ネイチャーホール(花と緑と自然の情報センター2階)
〒546-0034 大阪市東住吉区長居公園1-23
TEL:06-6697-6221 FAX:06-6697-6225
HP:https://www.omnh.jp/
地下鉄Osaka Metro御堂筋線「長居」駅下車3号出口・東へ約800m
JR阪和線「長居」駅下車東出口・東へ約1km
7.観 覧 料 大人500円、高校生・大学生 300円
期間内特別展フリーパス 大人1000円、高校生・大学生 600円
※本館(常設展)とのセット券は、大人700円、高校生・大学生 400円。
※中学生以下、障がい者手帳など持参者(介護者1名を含む)、大阪市内在住の65歳以上の方は無料(要証
明)。30人以上の団体割引あり。
※本館(常設展)、長居植物園への入場は別途料金が必要です(セット券を除く)。
8.後 援 大阪府教育委員会、大阪市教育委員会
9.特別協力 船の科学館「海の学び ミュージアムサポート」
10.特別展HP https://omnh.jp/tokuten/2025shells/(令和7年1月上旬より開設予定)
II.展示構成と主な展示
1.江戸時代の貝類学
江戸時代の日本で行われていた本草学としての貝類学を紹介するとともに、同時期に西洋の生物学者が取り組んでいた日本の貝類の研究を紹介します。
【主な展示】
・江戸時代の大坂の町人学者木村蒹葭堂の貝石標本
・幕末・明治の大阪に生きた博物家堀田龍之助の貝類標本
・貝類を扱った本草書(浄貞五百介図写本、貝尽浦之錦など)
・19世紀の西洋で発刊された日本の貝類のモノグラフ
・日本の本草学と西洋博物学との関わり
<木村蒹葭堂貝石標本(大阪府指定有形文化財)>
近世大坂の町人学者・木村蒹葭堂のものと推定されている奇石及び貝類標本です。奇石標本は鉱物や岩石が主体ですが、貝化石もいくつか含まれています。貝類標本は約400種からなり、ほとんどが日本及び周辺海域に生息する種ですが、1種だけヨーロッパ北大西洋に生息するモミジソデが含まれています。
<堀田龍之助貝類標本>
幕末・明治の大阪に生きた博物家・堀田龍之助が所蔵していた貝類標本です。堀田は商家の生まれで、本草学者の畔田翠山や山本榕室と交流があり、多くの博物画や書籍を所蔵していました。貝類標本を収めた重箱の仕切りには種名が書かれており、本草学における貝類の分類や研究の手法を類推できる貴重な資料です。
2.近代貝類学の幕開け
明治の開国以降、日本には西洋から近代科学が流入し、本草学は生物学に大きく転換しました。貝類学においてその受容に貢献したキーパーソンと彼らの活動を紹介します。
【主な展示】
・日本の貝類学のグローバル化と普及を目指した平瀬與一郎と平瀬介館、及び平瀬貝類博物館の活動
・平瀬介館が発行した多色木版画の図鑑「貝千種」の版木と洋画家西川 純による原画
・帝国大学の貝類学
・黒田徳米と黎明期の貝類学を支えた人々
・貝類専門博物館「舞子介類館」を開いた矢倉和三郎の活動
・化石貝類研究の始まり
・台湾、南洋群島など統治領での貝類学
<「貝千種」の原画と版木>
明治から大正時代にかけて京都で貝類標本商を営んでいた平瀬與一郎は、学術誌の発行や博物館の開設も手がけるなど、近代貝類学の受容と普及に大きく貢献しました。その平瀬が企画・発刊した「貝千種」は、多色木版画を和装した華やかで美しい貝類図鑑です。洋画家・西川純による原画と、刷りに使われた版木を初公開します。
※写真は貝千種(二)第25図の原画と版木です。会期中展示替えを行います。(所蔵:美術書出版株式会社芸艸堂)
3.貝類学のすそ野の広がり
大正から昭和、そして戦後にかけて、貝類学は様々な学問分野に展開し、標本の採集や収集活動は幅広い層に普及します。水産や公衆衛生における貝類学、図鑑などの出版による学校教育や収集家への普及活動の歴史を紹介します。
【主な展示】
・水産重要種であるスルメイカの生態調査、マガキやトリガイなどの養殖研究
・様々な漁具の開発史
・御木本幸吉が作成した半円真珠標本
・日本列島周辺の深海調査
・普及に貢献した図鑑とその図版の元になった標本
・日本住血吸虫症征圧のためのミヤイリガイ撲滅作戦
・研究の一翼を担うアマチュアの活動とそのコレクション
・江戸時代から現代まで、研究者の採集・調査道具紹介
・調査手法や採集技術が発達してもなお、今までにごくわずかしか見つかっていない「幻の貝」
<トリガイの人工種苗標本>
養殖で育てた親から受精卵を得て飼育し、親になるまで育成する「完全養殖」が実用化されている貝の一つにトリガイがあります。トリガイの人工種苗生産は1960~70年代から京都府などの水産試験場で研究が始まり、現在では京都府、石川県、宮城県などで漁業者による養殖が営まれています。(標本提供:京都府農林水産技術センター海洋センター)
<御木本幸吉が作成した半円真珠標本>
真珠養殖は1887(明治20)年頃に東京大学理学部動物学教室の箕作佳吉らが研究を始めました。その後、鳥羽の御木本幸吉が箕作から助言を受けて真珠養殖の技術開発に取り組み、1893(明治26)年にまず半円の真珠(アコヤガイの殻の内側に張り付いた状態の真珠)の作成に成功します。その後、箕作の教え子で御木本の娘婿となった西川藤吉が真円真珠養殖の基礎技術を確立しました。(所蔵:東京大学大学院理学系研究科附属三崎臨海実験所)
<「原色日本貝類図鑑」の図版に使われた標本>
大阪の小学校教員で寺の住職だった吉良哲明は、熱烈な貝のコレクターであり研究家でもありました。吉良は保育社からの依頼を受けて1954(昭和29)年に「原色日本貝類図鑑」を執筆・出版しました。図鑑に掲載された標本の大半は吉良自身の収集品です。写真はその一つのカワムラカセン(赤い菱形のラベルは図鑑の図示標本であることを示す目印)。
<アマチュアコレクターによる日本列島の貝>
日本列島のどこに、どんな貝がいるのか? ある地域に生息する貝類のリストを貝類相と言いますが、日本の貝類相を明らかにするうえで、各地のアマチュアによる標本の収集活動が大きく貢献しています。大阪市立自然史博物館が今までに寄贈を受けたコレクションにより、日本の貝類相を概観します。1:ヒオウギガイ(島根県西ノ島町・養殖)、2:エゾヒバリガイ(北海道稚内市)、3:ジャノメダカラ(沖縄県)、4:オオベニシボリ(相模湾)、5:ムラヤママイマイ(新潟県糸魚川市明星山)、6:ミカンオオハネガイ(千葉県館山市沖)、7:カサガイ(東京都小笠原村母島)。
<研究者の採集・調査道具紹介>
研究者は貝を採集し、調査するために様々な工夫をこらしてきました。それは道具に現れています。江戸時代から現代まで、いろいろな研究者によるイチオシの道具を展示します。写真は持ち運びが簡単で、海だけでなく川や池でも使えるように独自開発された枠型軽量ドレッジ。(提供:ざっこCLUB・佐藤達也氏、三重県立水産高等学校・小村雄作氏)
<幻の貝>
採集技術が発達し、様々な貝類の分布や生態が明らかになってもなお、なかなか手に入らない「幻の貝」というのがあります。何人かの貝類研究者に尋ねて「これは幻だと思う」という種をリストアップしてもらい、それらの実物標本や写真、スケッチを展示します。写真は高知県沖の島沖の深場から記録されているハボウキガイ科二枚貝ビードロタイラギ。生息数が少ないうえに殻が薄くてもろく、完全な状態で採集するのが極めて困難な貝です。
4.現代貝類学の最前線
新しい技術を使った現代の貝類学を紹介します。特にDNAの塩基配列といった遺伝情報に基づく貝類の系統分類学の手法と成果を解説します。また、新たな課題として貝類の置かれている現状と、それらを保全するための研究活動も紹介します。
【主な展示】
・フォトグラメトリ、マイクロCTなどによる形態の三次元解析
・ビデオカメラを使った貝類の行動解析
・アイソザイムやDNAを使う系統の解析のしくみとその例
・貝類の保全と外来生物問題
・市民科学による分布調査
・レッドリストを作るための貝類相調査
・小笠原の固有カタツムリの増殖と再導入事業
<フォトグラメトリによる3次元データ化>
新しい技術の登場によって、貝類の研究もまた大きく変革してきました。フォトグラメトリは立体物を様々な角度から撮影し、その画像を合成して3次元データに変換する技術です。フォトグラメトリは表面の色を記録できるので、生物の姿かたちをありのままに再現します。写真は大阪市立自然史博物館が公開している和泉層群のアンモナイト「ゴードリセラス・イズミエンゼ」のホロタイプの3次元データ。パソコンやスマホさえあれば、貴重な標本をいつでもじっくり観察できます。
<市民科学による分布調査>
科学研究で、特にそのデータの収集で市民の協力を得る手法を市民科学といいます。生き物の分布調査では市民科学が大きな力を発揮します。短期間で広い範囲の情報収集を実現できるとともに、調査に関する知識や意義を社会に広く普及できるという効果があります。写真は2018(平成30)年に大阪市立自然史博物館で行った市民科学による外来カタツムリ「オオクビキレガイ」分布調査の研修会の様子。
5.キミも沼ろう
ここまでご覧になって、貝の魅力にとりつかれましたか?あなたをこの沼にお誘いすべく、貝類学研究への様々な入口を紹介し、この特別展のまとめとします。
【主な展示】
・貝類の研究ができる全国の大学紹介
・みんなの自由研究紹介
・博物館で現在行っている大和川水系調査プロジェクトの紹介
・今日から沼る:スーパーの貝類学
<スーパーの貝類学>
大阪だと食材として買い求める貝はアサリ、シジミ、ホタテといったところですが、スーパーで注意深く見ていると変わった貝に出会うことがあります。鮮魚コーナーは貝類学の入口です。写真は2024(令和6)年に大阪市内のスーパーで売られていた愛知県産カガミガイ。
関連イベント
■特別展講演会
国内をフィールドとして貝類学の最前線を拓いてきた研究者をお招きして、ご自身の研究と貝の魅力を語って頂きます。
「進化史と貝類学史の交点:小笠原の陸貝」
日時:3月9日(日)13時~15時(開場12時30分)
会場:大阪市立自然史博物館本館 講堂(YouTubeを使った同時ライブ配信も行います。)
講師:千葉 聡氏(東北大学・東北アジア研究センター教授)
要旨:小笠原の陸貝の研究は、ピルスブリー、平瀬ら貝類学の偉大な先達に始まりますが、ギュリック
やグールドら歴史に残る進化学者も関心を寄せてきました。世界と日本の交差点でもあるこの小
世界にみる進化と、その現況について解説します。
定員:先着170名(講堂での聴講)
対象:講堂での聴講:どなたでも参加できます(小学生以下は保護者同伴)
ネット配信:インターネットに接続することができる方
参加費:無料(博物館での聴講の場合は博物館入館料が必要)
その他:5月31日(土)まで見逃し配信を行います。同時配信を見られない方はご覧ください。
「貝類のまぼろしに沼らされて」
日時:4月20日(日)13時~15時(開場12時30分)
会場:大阪市立自然史博物館本館 講堂(YouTubeを使った同時ライブ配信も行います。)
講師:福田 宏氏(岡山大学学術研究院環境生命科学学域 准教授)
要旨:蜃気楼は蛤が吐くとの伝説の通り、貝類はもともと幽明境定かならぬ幻影に近しい存在です。
「幻」を名に冠する稀少種はもちろん、サザエですら人の認知は長くあやふやでした。貝類と幻
の関係についてお話しします。
定員:先着170名(講堂での聴講)
対象:講堂での聴講:どなたでも参加できます(小学生以下は保護者同伴)
ネット配信:インターネットに接続することができる方
●参加費:無料(博物館での聴講の場合は博物館入館料が必要)
●その他:5月31日(土)まで見逃し配信を行います。同時配信を見られない方はご覧ください。
■ギャラリートーク
本特別展を担当した学芸員による展示解説を行います。
●日時:2月22日(土)、2月23日(日祝)、3月15日(土)、3月16日(日)、3月22日(土)、3月23日(日)、4月5日(土)、4月6日(日)
いずれも12時15分から30分程度
●場所:特別展会場内
■子どもワークショップ
特別展で一番やさしい子ども向け行事。ハカセやスタッフといっしょに、展示を楽しみましょう。
※日程等の詳細は決定次第、公式サイト等でお知らせします。
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