見上げたボーイズ 撮影:源賀津己 見上げたボーイズ 撮影:源賀津己

演劇プロデュース集団“見上げたボーイズ”が9月、博品館劇場にて新作『こむら返りと四十肩』を上演する。

見上げたボーイズプロデュース 音楽劇「こむら返りと四十肩」 チケット情報

“見上げたボーイズ”は作・演出・出演の川本昭彦を筆頭に、幸村吉也、平野亙、縄田晋、福永吉洋の5人からなる、今年で結成10周年を迎えた集団だ。歌やダンス、殺陣、アクションなど見どころの詰まったステージにおいて、つねに核となるのは“笑い”の要素。30代半ばで活動を開始した当時を、川本は「オッサンたちがバカバカしいことを本気でやっているところを見せたい。ダメなヤツらにも生きてる意味があるんだ!というのが一つのテーマで、演劇が明日の糧になる、生きる力になることを目指してやってきました」と振り返る。幸村も頷きながら「若い世代を見ていると、自分たちの当時の情熱や作品に取り組む姿勢とは違って、何かが欠けているように感じる。じゃあ俺たちオッサンが本物を見せてやるよ!という心意気がありました」と言葉を重ねた。

今回の新作も、タイトルだけを見れば気楽なコメディを楽しめそうな予感。だがその中身は想像を越えて、震災後の福島を描いたものだ。メンバー全員が「これまでにない挑戦」と意気を高めている。「やはり戦争や震災について書くことに、なかなか覚悟が持てずにいたんです。でも何かを発信する立場として、今、目の前で起きている問題について、自分の目で立ち向かわなければいけないと思った。“見上げたボーイズ”なりのアプローチでこの問題に向き合っていこうと思っています」(川本)

言葉の通り、「基本、笑いが主軸」(幸村)という姿勢は変わらない。その上で、川本が現地を訪れて震災の爪痕を体感し、避難している方々の声に耳を傾けて書き下ろした作品は、「台本を読んで、初めて泣いてしまった。絶対に面白くなる!という実感があります」(縄田)、「そんな重いテーマを自分たちができるのかな…と不安でしたが、こうきたか!と驚いた」(福永)とメンバーからの評価も上々。確かな進化が期待できそうだ。

「本当にチャレンジです。でもそれに伴って多くの人が応援してくれて、いろんな人が関わって、つながってくれるのが嬉しい」(平野)40代半ばの“ボーイズ”が仕掛ける新展開。精神的にも体力的にもまだまだこれから?といった少々意地悪な質問を向けると、川本の「体力的には正直、限界が~!!」というおどけた叫びに爆笑が起こる。しかし続けて「でもね、精神的にはすごく人間力がついているので、強いですよ!」と力強く答えてくれた。多くのファンを引き寄せる彼らの人間力、その魅力をぜひ劇場で味わいたい。

見上げたボーイズプロデュース 音楽劇「こむら返りと四十肩」は9月18日(木)から9月23日(火・祝)まで、東京・博品館劇場で上演。チケットは発売中。

取材・文 上野紀子