「休憩なしで15時間連続の勤務」「正社員の約60%が3年以内に離職」‥‥近ごろ、とある飲食店チェーンの大量閉店を皮切りに注目されてきた“ブラック企業”問題。第三者委員会やマスメディアから過重労働を批判されてもまだ本質的な解決はできていないようで、とても根深い問題であることがわかります。過労死(KAROSHI)が国際語になっていることも含め、もう少し日本人は働きすぎ――というか働かせすぎを見直す時でしょう。

ところで、探偵業界にいた筆者には、実はこうしたニュースの伝える悲惨さがあまりピンと来ていません。「3年で40%も社員が残ってくれるのか。羨ましいな」とさえ思ってしまいます。ドラマや漫画のイメージでしか知らない“探偵業界の労働事情”がどんなものなのか、人事にも携わったことがある筆者の体験談をまじえてお伝えします。

(※本記事は数年前まで業界にいた個人の体験・伝聞を述べるもので、必ずしも現在の業界全体を正しく語っているものではありません)

 

探偵になるには?

まずは就職方法から。探偵になるには大きく「求人を探して申し込む」「探偵学校を卒業して、その系列会社に雇われる」「自分で独立開業する」の3パターンがあります。

一番オーソドックスなのが、ネットや情報誌で求人を探すこと。ただしほとんどの大手就職情報誌では探偵社からの求人掲載を受け付けていません(業界自体の信用度が低いせいでしょう‥‥)。なので基本的には中堅どころの求人ウェブサイトか、探偵社ごとのサイトにある「求人案内」ページから探すことになります。離職率が高いためか、応募して面接までこぎ着ければ採用確率は意外に高いと思います。調査員を希望する場合は報告書が打てる程度のパソコン知識と、自動車の普通免許を持っていれば安心でしょう。

次に、探偵学校に通う方法。卒業すればその学校を運営している探偵社の系列店で雇ってもらえる資格が得られます。どのくらい就職率が保証されているかは各社まちまちで、学校に通うだけでも数十万円のコストがかかります。個人的にオススメできる方法かと問われれば、イエスともノーとも言えません。

いきなり独立も可能なのは、トヨタやパナソニックに相当する超メジャー企業が存在しない探偵業界の魅力と言えるでしょう。探偵業法により開業時に届け出が義務づけられていますが、ハードルはそれほど高くありません。ただ、経験ゼロの素人が思いつきで開業して生き残っていけるほど甘い世界でもありませんから、探偵学校に通ったり、他社で何年か経験を積んだりしてから独立する人が多いように感じます。

ちょっと怪しげな雑誌に載っている「我が社のフランチャイズに加盟すれば年収1億円も可能!」といった甘い広告にすぐ飛びつくのはやめましょう。筆者も何度か、この手のフランチャイズ詐欺に引っかかった人から相談を受けたことがあります。フランチャイズ詐欺をやるところは肝心の調査も手抜きで、依頼者からの苦情が多いです。