普段何気なく使っている言葉の中には、実は意味が全然違うのに多くの人が勘違いして使っている言葉がある。今回は、「触りだけ話す」などと使われる慣用句の、「触り」とは一体どの部分なのかを見ていきたい。
実は勘違いしている人が多い慣用句
(画像はイメージ)
導入部分のことじゃなかったの!?
「触りだけ説明すると」「触りだけ聞かせる」のような言い回しを一度は使った、または耳にした経験はないだろうか。日常生活や仕事でもよく使われる言葉だが、多くの人が「触り」の意味を「導入部分」だと思って使用しているようだ。
実際には「触り」とは「要点」を意味する言葉で、「触りだけ話す」の意味は「要点だけ手短に話す」ということ。
しかしSNSでは「ずっと勘違いして使ってたよ!」「これってほぼ全員間違えて使ってるんじゃない?」という声もあり、本当の意味を知って驚く人も少なくない。
「触り」の意味のとり間違いで、コミュニケーションのずれが生じてしまうことも。例えば仕事上で「触りだけ説明して」と言われて導入だけを軽く話したら、相手が求めてるのは内容のまとめだったということも考えられる。逆に相手が触りの意味を間違えていた場合、要点を話そうとしてもズレが生じてしまうだろう。
人形浄瑠璃の義太夫節の「触り文句」から転じた言葉
もともと「触り」とは、人形浄瑠璃の義太夫節で、最も聞きどころとされている箇所のことを指す「触り文句」から転じた言葉。聞きどころ、聞かせどころという意味から、話しの要点、重要なポイントという意味で使われるようになったと言われている。
しかし「触り」という響きが、軽く触れる、表面的に触れるという印象を受けやすいため、導入部分を連想する人が多いのだろう。「触り」の背景を知らなければ、導入部分を指す言葉だと勘違いするのも無理はない。
漢字や響きからは想像できない意味を持つ言葉もあるので、人によって認識の違う言葉の背景を辿るってみると面白いかもしれない。(フリーライター・井原亘)
■Profile
井原亘
元PR会社社員の30代男性。現在は流行のモノや現象を追いかけるフリーライターとして活動中。ネットサーフィンとSNS巡回が大好きで、暇さえあればスマホをチェックしている