見た目と香りは白ワインだが味は赤ワインになる装置とは?(画像はイメージ)

日々進化し続けているテクノロジー。あらゆる分野に影響を与えているが、味覚の世界においても例外ではないようだ。「食の未来」までを変える可能性を秘めている、“味覚”に関するテクノロジーの現在地を探っていこう。

見た目と香りは白ワイン! でも味は赤ワインになる装置って?

(画像はイメージ)

最新テクノロジーで白ワインの味が赤ワインに変わる?

今回注目したのは、明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科の宮下芳明研究室が開発した調味装置「TTTV3」。AIに味を推定させて、基本五味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)や辛味などをデータ化し、各味の溶液を混合噴射して指定した味を再現する装置だ。

味の再現度は高く、0.02ml単位で溶液の調整ができ、プロの料理人よりも細かく風味を変えられるという。20個ある味タンクは、各1000段階の制御が可能。操作も簡単で、白ワインを装置に入れて赤ワインと指定すると、分析して調合された液体が入る。すると、見た目や香りは白ワインのまま、味だけ赤ワインにすることができる。

白ワインと赤ワインの「味の差」を引き算して赤ワインの味を足すという仕組みで、組み合わせは10の60乗通りという膨大な数。味の違いだけでなく、産地や品種まで再現が可能だという。「TTTV3」を使えば、甲殻アレルギーの人がカニの味を体験できたり、ニンニク料理を口臭を気にせず楽しんだりすることもできる。

一方、味の感覚を他者と共有できる技術が、NTTドコモの「FEEL TECH」だ。24年1月の「docomo Open House’24」に出展された同技術は「同じものを食べても人の好みによって味の感じ方が違う」点に注目。最新テクノロジーによって「言葉ではうまく伝えにくい味」を再現した液体を作成し、相手に共有することを可能にした。

使われているのは「人間拡張基盤」という、人間の感覚をネットワークで拡張するプラットフォーム。「自分が感じている味」と「相手の味覚感度」をデータ化し、相手が感じられるようにアクチュエーションデバイスで味覚標準液を調整して再現する。

食の未来を変える可能性を秘めている味覚テクノロジー。伸びしろは大きく、健康管理や食物アレルギーなど生活に直結した様々な活用が考えられるだけに、これからの発展に期待したい。(フリーライター・佐々木剛)

■Profile

佐々木剛

大手メーカーに勤務後、一念発起してウェブメディア業界に転職。その後フリーライターとして独立し、現在に至る。メーカー時代の経験を活かし、テクノロジー、機械、技術系中心に執筆。