市川海老蔵がユニークな企画に挑戦する。10月から11月にかけて、東京・日本橋三井ホール、京都四條 南座で、「市川海老蔵が紡ぐ『和の世界』 JAPAN THEATER」を開催。その内容とは、歌舞伎舞踊、能の仕舞、落語、三味線、『平家物語』の朗読と、伝統芸能の各ジャンルが大集合。海老蔵自身は新作舞踊『男伊達花廓』と、朗読を披露する。シンガポール公演も決定している、この企画、どんな思いが込められているのか、海老蔵に聞いた。
市川海老蔵が紡ぐ「和の世界」 JAPAN THEATER チケット情報
海老蔵は、これまでにも自主公演「ABKAI」で宮沢章夫、宮本亜門らと組んで新作歌舞伎を上演したり、能とコラボレーションする「古典への誘い」で、全国各地を回ったりと、新たな試みに取り組んできた。今回の「JAPAN THEATER」も、歌舞伎ばかりでなく日本の古典芸能を世界に広めたいという思いがある。
「歌舞伎は歌舞伎、能は能、落語は落語と、意外とみんな個々に孤立しているんです。でも、日本の伝統芸能という意味ではみな同じではないでしょうか。それぞれが独自に発展していくのは当然だけど、少し視点を変えて、日本の伝統芸能という括りで、一緒に公演をしてもいいのではないかという思いがありました。それで世界へ行けたらいいなという気持ちがあります」
ジャンルを越えて若手を結集する、いかにもエネルギッシュな海老蔵らしい考えだが、その面白い発想の源になっているのは、「直感」だと言う。「そんなに考えて行動するよりも、発想を豊かにしたほうが絶対にいいと思うんです。悩む前にやってしまう(笑)。やってみると、大きな壁に必ずぶつかりますが、それは、その都度、乗り越えて行けばいいんですよ。僕は、いつもそうやって芝居や舞踊を作ってきました。やってみて初めて分かることも多いんです。だから、今回もやってみて発見することがたくさんあると思っています」
海老蔵は『平家物語』では、「那須与一」を朗読、新作舞踊も準備中だ。「朗読は結構、難しいですね。言葉だけで臨場感や説得力を持せなければならない。ちょっと考えていることもあるのですが、勉強し直します。舞踊は娯楽性の強い楽しいものになる予定です」
能の仕舞では源平合戦を描いた「屋島」、女形の歌舞伎舞踊「藤娘」など、多彩な演目が並ぶ。「日本の伝統文化は、余白に美を見出し、何もないところに無限の存在を感じるなど、独特のものです。その魅力を一度に体験していただけると思います」
海老蔵コレクションの「和の世界」を堪能してほしい。公演は10月11日(土)から26日(日)まで日本橋三井ホール、10月29日(水)から11月2日(日)まで京都四條 南座にて上演。チケットは発売中。
取材・文:沢美也子