4 キャラクター、作者のこだわりを表わす

ひとつのシーンを切り出すだけでなく、マンガ全体を通して見た場合にも、タバコの果たすユニークな役割に気づくことがある。どんなタバコを吸っているかで“キャラクターの個性”を出すという試みを、意外に多くのマンガ家がやっているのだ。

たとえば『ゴルゴ13』はキャラクターの多くがタバコを吸うが、よく見ると若者は一般的な紙巻きタバコ、こだわりのある者は葉巻(ゴルゴも葉巻派)、年配になるとキセルやパイプ……などキャラクターごとに愛用するタバコの種類が違っている。

『ブラックラグーン』では、同じ紙巻きタバコにしても各キャラクターが別銘柄を吸っているという見事なこだわり具合。人気マンガ家の福本伸行氏もタバコにはこだわるようで、『カイジ』『アカギ』『銀と金』『最強伝説黒沢』など作品ごとの主人公にはそれぞれ別銘柄のタバコを吸わせ、さらに同じキャラクターでも時期が違えば銘柄を変えるなど、芸の細かいタバコ描写がなされている。

タバコへのこだわり描写は作者の自己満足に終わることなく、ファンサービスにもなっているのが愉快なところ。ネット上では各作品のファンが「このキャラクターはこの銘柄を吸っていた」と情報を持ち寄り、あれこれ議論しながら楽しむ様子が見られる。


このように、普段は小さなコマの中で見落としがちなタバコというアイテムだが、実はマンガ作品内で多くの役割を果たしている。皆さんもたまにはページをめくりながら、名シーンの中にある“名脇役”の存在に注目してみても面白いかもしれない。

パソコン誌の編集者を経てフリーランス。執筆範囲はエンタメから法律、IT、教育、裏社会、ソシャゲまで硬軟いろいろ。最近の関心はダイエット、アンチエイジング。ねこだいすき。