福岡雄大 福岡雄大

新国立劇場では毎年交互に『シンデレラ』と『くるみ割り人形』の2作品をクリスマスの風物詩として上演している。今年は『シンデレラ』の世界が用意されており、小野絢子と共におとぎ話の恋人たちを演じる福岡雄大に作品への思いを訊いた。

新国立劇場バレエ団『シンデレラ』チケット情報

「シンデレラは彼女の成長によって、現実の世界で出会いがあって最後には結ばれるという夢の叶うストーリー。魔法を掛けられているような作品で、演ずる側もお客様も温かく幸せな気持ちになります」

アシュトン版シンデレラは、英国の香り溢れる豪華な舞台だ。「1幕のシンデレラの部屋の場面がイギリスの芝居を見ているみたいな感覚になりますが、その中にバレエのテクニックが含まれていても、そこが強調されない演出になっています。舞台袖に捌けるまで細かい芝居の指定があり、お客様の目に触れないようなところまで注目して頂きたいです。2幕は舞踏会のシーンで華やかな踊りが中心になります」

プロコフィエフの音楽に惹かれ、バレエの舞台に足を運ぶ観客も多い。「バレエは音楽があってのものじゃないですか。僕はプロコフィエフの曲が本当に好きです。一番凄いと思うのが、重いパートと軽やかなパートの違いがはっきりしている部分で、ロミオとジュリエットにもみられる音楽と群舞の重厚感や、明るくて軽快な音楽とのメリハリ感が素晴らしいです」

おとぎ話の王子様を演ずるに当たっては「普段踊っている古典作品も一緒ですけど、おとぎ話は幻想的な世界観を大切にしないと台無しになります。シンデレラの王子は、ジークフリート(白鳥の湖)のように決まったイメージがないので、その人の個性で染めていける役柄だと思います。僕は爽やかにいきたいです。夢を壊さないような王子になりたい」と謙遜するが、実際の福岡は舞台の美しい佇まいからは想像できないようなひょうきんで気さくな性格だ。

「仙女がかぼちゃに魔法を掛けて馬車に変身させるって夢がありますよね。子供たちだけでなく大人にも楽しんでもらえる見せ場だと思います。あと、星の精の踊りは、ソリスト級のメンバーが煌きに満ちた場面をお見せします。公演を観終わったあとクリスマスに家族や恋人っていいな、と心に残る舞台をお届けできるよう、頑張ります。」

ラストシーンでふたりが結ばれる情景は宇宙的な美しさ!「劇場で踊っている事を忘れてしまう感覚が生まれます。お客様にも客席から別の世界を感じて頂けるのではないでしょうか」と極上の王子スマイルを魅せた。

福岡雄大が出演する新国立劇場バレエ団「シンデレラ」ぴあスペシャルデーは、12月20日(土) 13:00開演、新国立劇場オペラパレスにて。

取材・文・撮影:高橋恭子(舞踊ジャーナリスト)